食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.1|LIVING DESIGN CENTER OZONE"> 桒原さやかさん オリバー・ルンドクイストさん インタビュー 「北欧の暮らしから学んだ豊かな時間を過ごす知恵」 <font style="font-size: 60%;">食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.1</font>|LIVING DESIGN CENTER OZONE

桒原さやかさん オリバー・ルンドクイストさん インタビュー
「北欧の暮らしから学んだ豊かな時間を過ごす知恵」
食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.1

世界各地の食卓にまつわるエピソードを通じて、地域の生活や文化を探り、食のあり方を考える全4回のシリーズ「食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫―」。
第1回に登場するのは、北欧のライフスタイルに関わる仕事や、スウェーデンやノルウェーでの生活経験を活かして、北欧と日本の2つの視点から暮らしのアイデアを発信する桒原さやかさんと、夫であるオリバー・ルンドクイストさんです。
北欧で目にしたことや感じたことが、お二人のライフスタイルや価値観にどのような変化をもたらしたのか。これまでの経験と現在の暮らしについてお話を伺いました。

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生活に寄り添うDIYキッチン

日本とスウェーデン。風土や言語、そして食文化も大きく異なる土地で生まれ育った、桒原さやかさんとオリバー・ルンドクイストさんは、スウェーデンの家具ショップ「イケア」の同僚として出会い、「北欧、暮らしの道具店」で勤務した後、結婚しました。その後、二人はノルウェー北部のトロムソで1年半暮らし、現在は長野県松本市に移住して、5歳の娘と3歳の息子と4人で生活をしています。
「大学生の時に松本で過ごしたことがあり、自然に囲まれたこの土地が好きだったこと、コンパクトな町がトロムソに似ていることもあって、ここで暮らすことに決めたんです」とさやかさん。

一家が暮らすのは、松本市郊外の北アルプスの山々が見渡せる高台の一軒家です。和室や縁側のある築44年の日本家屋を、自分たちのライフスタイルに合わせてDIYをしながら暮らしています。さやかさんとオリバーさんは、北欧での経験やそこで出会った人たちから学んだことを、松本の暮らしの中で実践していると言います。
「北欧では、暮らしに合わせて家をDIYするのが当たり前なんです。この家の中で一番手をかけたのがキッチン。窓から見える裏山の景色が綺麗だったので、元々あったすりガラスの引き違い窓をはめ殺しの一枚ガラスに変えて、外の景色を眺められるようにしました。キッチンは、イケアで自分たちが使いやすいようにカスタマイズして取り付けたものです。お気に入りは、壁に白いタイルを貼った自分専用のガスコンロ。業務用の火力が強いガスコンロを入れたので、趣味の中華料理を思う存分つくれるようにしました」とオリバーさんは、嬉しそうに話してくれました。

キッチンとダイニングの間にあった襖を取り払い、その間にはアイランド型の作業台兼キャビネットを設けました。ここでは踏み台に乗って、二人の子どもたちが料理やおやつづくりのお手伝いをしてくれることも。白を基調としたキッチンには、大きな窓から自然光が降り注ぎ、常ににぎやかな家族の声が響き合います。

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さやかさんとオリバーさんが自らリフォームしたキッチン。収納スペースをたっぷり設けて使いやすく生まれ変わった。

食事の場所と
時間の過ごし方を選ぶこと

住まいの中で、北欧流の暮らしが色濃く現れているのは、食卓のシーンだと言います。
「北欧は、冬が長いからか、家の中に食事を楽しめる居場所がいくつもあって、天候や気分に合わせて場所を選んで、食事を楽しみます。我が家でも、夫がDIYでウッドデッキをつくったり、薪ストーブを設置したり、家の中に居心地の良い場所を少しずつ整えて、食事や団欒を楽しんでいます」とさやかさんは話します。日本では、住宅事情の影響もあって、「食卓=ダイニングテーブル」という固定概念に囚われてしまいがちですが、桒原さん一家のように場所の機能を限定せず、自由に食事の場所を選ぶことで、日常の食卓に新鮮な楽しみが生まれそうです。

1年半のノルウェーでの暮らしの中で、さやかさんのマインドを大きく変えたのが、食事に関する考え方だったそうです。
「北欧の人たちは、共働きがほとんどなので、平日は凝ったものはつくらなくて、本当にシンプルな食事で済ませています。そこに対しての罪悪感は全くなくて、むしろその後の家族や個人の時間を大切にすることに徹底しているんです。日本の場合は、もっと食事が文化の中心にある気がするのですが、平日は無理をせず、その代わりに休日には時間のかかる料理に挑戦したりする北欧の人たちの食事への向き合い方を知ったことで、肩肘を張って『頑張ってつくらなくちゃ』という罪悪感から解放されたんですよね」とさやかさん。

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北アルプスの山々の景色を楽しめる、オリバーさんお手製のウッドデッキ。

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1年半暮らしたノルウェー・トロムソの住まいにはベランダがあり、晴れた日には簡単なバーベキューを楽しむことも。

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ノルウェーでの一般的な朝食。パンにチーズやハム、野菜を乗せた簡単なものが多く、調理に時間をかけず、さっと食べて学校や仕事に向かう。

北欧の暮らしが教えてくれた
詰め込みすぎない等身大な生き方

仕事や幼稚園の送り迎えがある忙しい平日は、30分もかけずにつくるシンプルな料理が中心。その分、時間がある時や週末は、新しいレシピに挑戦したり、子どもたちと一緒におやつづくりをしたり、友人を招いたホームパーティを開くなど、料理や食事の時間を存分に楽しむそうです。

食事の時間にテレビをつけない、というのも北欧流の習慣のひとつ。食事の時間はテレビを消して、家族で一日どんなことがあったのか、話したり、聞いたりしているそうです。

自然と食卓の話題に上がるのは、家の裏山の斜面を利用した家庭菜園のこと。
「『ピーマンが昨日より大きくなったよ』『トマトを先に鳥に食べられちゃった』という畑の話になることも多いですし、一緒に畑に水やりをしたり、草取りをして野菜を育てていると、嫌いだったきゅうりを子どもたちが丸かじりして食べられるようになったんです。食育の面でも、菜園づくりの環境に恵まれた松本に移住してよかったなと実感しています」とさやかさん。

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家の裏山の斜面を利用した家庭菜園では、ピーマンやトマト、シシトウなどを育てている。子どもたちもお手伝いを通して、畑で野菜の育つ様子を日々見つめている。

今の暮らしができているのは、ノルウェーでの生活を経験したからだというお二人。10年間東京で働いていた時は、仕事が中心の毎日で、自分を見つめる時間が持てなかったそうですが、北欧で様々な人たちの生活の仕方や働き方を見てきて、もっとゆっくり暮らしたいと考えて、フリーランスという働き方を選び、松本への移住を決めたそうです。
「ノルウェーでの経験から、詰め込みすぎないというのをすごく意識するようになりました。自分にとって何が大事なのかが分かってくると、生活も手を抜くところは抜いて、頑張るところは頑張るというバランスが取れてきて、気持ちも楽になったんですよね」とさやかさんは話します。

北欧と日本の文化や風習、住環境から、自分たちが心地良いと感じるものを選びとって、生活の中で実践するさやかさんとオリバーさん。その生き方には、私たちの暮らしを豊かにするヒントがたくさん詰まっていました。

プロフィール

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photo by 木村文平

桒原さやか(くわばら さやか)
大学卒業後、「イケア」「北欧、暮らしの道具店」に勤務。退職後はノルウェーのトロムソに一年半ほど夫のオリバー・ルンドクイストと共に移住。現在は長野県松本市でフリーランスのライターとして活動中。著書に「北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし(ワニブックス)」「北欧の日常、自分の暮らし(ワニブックス)」がある。
Instagram:@kuwabarasayaka

オリバー・ルンドクイスト
スウェーデン出身。日本に留学後、そのまま日本で就職。カメラマン助手やウェブデザインの仕事を経て、システムエンジニアとして「北欧、暮らしの道具店」に勤務。その後、ノルウェー・トロムソに移住し、現地のウェブ会社に勤める。帰国後は、フリーランスのウェブディベロッパーとして、日本とノルウェーの会社と仕事をしている。趣味は中華料理とコーヒー。

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※2024年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

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