食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.3|LIVING DESIGN CENTER OZONE"> ツレヅレハナコさん インタビュー 「世界を旅して出会った料理を再現する、理想の台所」 <font style="font-size: 60%;">食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.3</font>|LIVING DESIGN CENTER OZONE

ツレヅレハナコさん インタビュー
「世界を旅して出会った料理を再現する、理想の台所」
食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫― vol.3

世界各地の食卓にまつわるエピソードを通じて、地域の生活や文化を探り、食のあり方を考える全4回のシリーズ「食卓が生み出すものとは?―世界の食卓から学んだ知恵と工夫―」。

第3回に登場するのは、おいしいごはんとお酒を求めて、日本各地や世界各国を飛び回り、これまでに訪れた世界各国で習った料理についても紹介する文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさんです。

幼い頃の海外での食体験や、10代での海外一人旅の経験を経て、現地で料理を教わる現在に至るまでの食と旅の遍歴、そして大好きな台所のために始めた家づくりについてもお話を伺いました。

台所

海外で育まれた食への探究心

自分自身を「筋金入りの食いしん坊」と評する、文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。おいしいごはんとお酒を求めて、国内外を旅しながら、そこで出会った食にまつわるエッセイやレシピを紹介する著書を多数出版されています。食を中心とした日常生活を発信するSNSも人気で、フォロワーは7万人以上。これまで訪れた国は32カ国で、「食べたいものがあること」が旅の目的だというハナコさん。食への飽くなき探究心は物心つく前からあったと話します。
「両親と兄と私の4人家族で、みんな食べることが大好きなんです。父は海外赴任が多かったので、幼い頃から海外に行く機会に恵まれていました。父は気取ったレストランに行くというよりも、短パンとサンダルで気軽に入れる食堂や屋台に行って、現地の人に混じってローカルフードを食べるのがとても好きでした。私が小学校低学年の頃、台湾の高雄に駐在していた父に会いに行った時に、『今日はエビを食べに行くぞ』と言われて、小さな船に乗って離島に渡りました。海の家のような食堂の席に着くと、塩茹でしただけのエビがたくさん入ったボールがドンとテーブルに置かれて、エビをほおばっては、殻を地面に捨てるを繰り返して、ひたすらエビを食べ続けた思い出があります。一人50尾は食べたんじゃないかなあ。大人になってから、もう一度訪れようと思ったら、その店はもうなくなったみたいで。幻だったのかな、と思うぐらい不思議な体験だったんですけれど、茹でただけのエビがとっても美味しかったのは鮮明に覚えています」

初めての海外一人旅は高校生の頃。旅行雑誌に載っていた美味しそうなタイのカオマンガイの写真の横に「1皿90バーツ(約180円)」と書かれていたのを見て、「こんなに美味しそうなぶっかけ飯が180円で食べられるの? それなら自分が好きなものを自由に食べる旅がしたい」と、アルバイトで貯めたお金で格安航空チケットを買って、初めてタイで一人旅を経験したそうです。10代でアジアに一人旅をする度胸にも驚かされますが、その行動力の源が食への好奇心というところが、食いしん坊のハナコさんらしいエピソードです。

スリランカのマーケット1

スリランカのマーケット2

世界中どこへ行っても、市場が好きだというハナコさん。色鮮やかな野菜が並ぶベトナムの市場(左)。島国スリランカならではのフィッシュマーケット(右)。

旅のテーマは「その土地の料理を習うこと」

大学生になってバックパッカーになり、社会人となって現在まで訪れたのは32カ国。世界を旅する時にテーマにしているのが「その土地の料理を習うこと」。
「料理のいいところって、言葉が多少わからなくても見ていれば分かるじゃないですか。何をどのぐらい入れるのかとか、そういうのを見て覚えるのが楽しい。嫌がられないかって? どの国に行っても自分の国の食文化に興味を持ってくれる人には好意的。日本だって、外国人から和食のことを知りたいと言われたら嬉しいですよね。現地の料理教室で習うこともありますが、レストランで美味しい料理に出会って、『厨房を見せてください』と言うと割とみんな快く見せてくれたりして、身振り手振りで料理のつくり方を教えてくれます」

そんなハナコさんが旅のルーティーンとして必ず組み込んでいるのが、帰国直後の宴会。海外で手に入れた調味料や食材を使って、教わったレシピで現地の味を再現し、旅の出来事を語らいながら、友人たちに料理を振る舞うのです。そこで評判が良かった料理は、日本で手に入る食材や調味料でつくれるように改良して、レシピ本にまとめることも。美味しそうな料理の写真と、その食べ物とのエピソードがユーモラスに綴られたコラムを読んでいると、お腹が鳴って自然と食欲が湧き上がってきます。

厨房

ウズベキスタンの食堂。厨房を見せてもらったついでに料理も教わった。

五つ星ホテルに勤めていたシェフ

インド・ジャイプールの料理教室。チャイを入れる元五つ星ホテル勤務のシェフ。

理想の台所のために家を建てる

2020年、ハナコさんは東京郊外に自宅兼仕事場の一戸建てを新築しました。
「家を建てる前に住んでいた賃貸マンションでは北側にクローズドの台所があって、その台所の小窓から光が差し込む光景がとても好きでした。初めは中古マンションを購入して、自分好みの台所をつくろうと思ったのですが、最近は南向きのアイランドキッチンが多く、『理想の光が差し込む台所』を持つ物件なんて、なかなか見つかるわけもなく。ならば一から家を建てようと」

建築家に伝えた要望は、台所とリビングを中心にしたいということだけ。第一優先だった北側のクローズドキッチンは、2階フロアの半分を占める12畳あり、北側の壁面に厨房機器メーカーが住宅向けに開発したステンレスキッチンを配置。仕事でレシピ開発や料理教室を開く時のため、複数人が同時にキッチンに立っても作業がしやすいように壁に沿ったL字型にして、作業台をたっぷり取りました。台所の中央には壁を立て、そこを中心に収納棚を設けたパントリーは回遊が出来て物が見やすく、取り出しやすいため、どこに何を仕舞ったのか一目で分かり、とても使いやすいそうです。

台所と同じ2階には、大人数の宴会が開ける広いリビングを設けました。台所とリビングの間の階段スペースの上に設けた天窓からは光が降り注ぎ、その下の棚には、世界を旅して集めた鍋が並んでいて、目を引きます。
「私は家を建てたかったわけではなくて、理想の台所をつくりたくて、家を建てたんです。元々台所が好きで、『台所に住みたい!』と思うくらい落ち着く場所で。だから、建築家の方には、台所とリビングを中心に設計してもらって、寝室も布団が敷いて寝られればいい、浴室も浴槽はなくてシャワーだけで良かったから、あとはお任せしました。家づくりって、自分の優先順位と向き合う作業なんだなと実感しました。予算が限られているから、自分にとって何が大切なのかをひたすら突き詰めていく。それが私にとって台所とリビングだったんですよね」

台所

このために家を建てたと語る「ガスコンロ横の窓から入る光」。きれいな光が心地よく、一日のほとんどを台所で過ごすことも。

食器棚

古い本棚をリペアして食器棚として利用。青森のアンティークショップで見かけて購入した。

鍋専用の棚

新居に必ず作ると決めていた鍋専用の棚。各国で集めた鍋をリビングから毎日眺められる場所へ。

今回訪れたハナコさんの台所には、旅先で出会った調理道具や皿、調味料が目に見えるように収納されています。台所に置かれたひとつひとつに、出会った時の旅の思い出を語るハナコさんから、自身が良いと思ったモノへの愛着が見てとれます。ご自宅の中でも圧倒的に物量とこだわりが詰まっているのが台所で、逆にそれ以外のお部屋はシンプルそのもの。衣食住の中で食に特化した潔さがあり、好奇心に対するまっすぐなハナコさんの人柄が台所に現れているよう。誰もが住みやすい標準化された最大公約数的な家とは違う、自分だけの尺度でつくられた家は、おおらかで肩の力が抜けた、自由な空気が流れていました。

プロフィール

ツレヅレハナコ

ツレヅレハナコ
食と酒、そして旅を愛する文筆家・料理研究家。雑誌やWEBにてレシピやエッセイなど記事を寄稿。オリジナル揚げ鍋や調理バット、食器などのプロデュースも手掛ける。著書に『食いしん坊な台所』(河出文庫)、『世界の現地ごはん帖』(光文社)など多数。

Instagram:@turehana1
『おいしいトコだけ世界一周食べ歩き 世界の現地ごはん帖』(光文社)

FUN EAT!-食を楽しむこれからの暮らし-

"生きるために食べること"から『生きることを、より一層楽しむために食べる』時代へと変化した昨今、いま私たちには何が求められているのでしょうか?
リビングデザインセンターOZONEでは『FUN EAT!』をテーマに、さまざまなゲストを迎えるトークセミナーやキッチンの展示、ワークショップなどを通じて、食と暮らしの楽しみ方をご紹介します。


※2024年7月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

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