OZONE館内ショールームの[ものづくりの現場]をレポート。
製造工程や、品質管理など、ショールームに並ぶ製品の背景をお届けします。
陶磁器と同じように、土を主原料とするタイルは、古代エジプトのピラミッドの内部装飾にも用いられた歴史ある建材だ。近年では天然素材ならではの環境性やデザイン性が改めて注目されている。そんなタイルの国内シェア30%を誇るメーカー、株式会社日東製陶所(岐阜県多治見市)を訪れた。
まず、同社が2016年、美濃焼団地内にオープンした「スワンタイルカフェ」を訪問。床や璧の内装をはじめ、カウンター、テーブル等にはオリジナルブランド「スワンタイルJの製品がふんだんに使用され、ブルーのランプシェードには、釉薬桶を再利用したものが使われている。
珍しい形のタイルや個性的なカラーを組み合わせた張り方など、一口にタイルといっても多彩な表現があることを体感できる空間だ。
次は本社でタイルについて短いレクチャを受け工場に向かった。タイルの材料は、粘土、長石、珪石などを混合した土で、「はい土」と呼ばれる。水分をほとんど含まない「はい土」は、すべり台のような装置で工場内に送られ、そのまま高圧プレス成形機で所定の形に整えられていく。それに釉薬をムラなく吹き付け、耐火容器にセットし、トンネル窯に送る。焼成温度は1260℃で、陶器の1000℃よりも高い温度で焼き上げ、磁器化させる。約20時間かけて焼成される間に釉薬はガラス化し、焼きしめられたタイルの表面で美しく発色する。
工場の隣には、同社の釉薬研究所「若尾化学」がある。工場でのオートマティック化された製品の製造とは対照的に、ここでは袖薬の計量もテストもすべて手作業だ。2500種類以上の顔料からイメージにふさわしい色をつくり出すには、人間の微妙な感覚が欠かせないという。同社のタイルの美しい色や優れた機能は国内外で高く評価されていて、超富裕層の邸宅のプールに施工するタイルといった、外国の住まいのための特別なオーダーも受注している。デザイン性の高いタイル装飾は、環境に配慮したアプローチを求める建て主の個性を表現するアイテムともなるだろう。
同社はOZONE館内にもショールームがあるので、ぜひ実物でタイルの魅力を感じてみてほしい。近年はカビや汚れに強い目地材も登場し、日本でも多様な空間にタイルの可能性が広がっている。
タイルの原科となる「はい土」は、水分量が非常に少なく、さらさらしている。タイル製造では、粘土ではなく、はい土を金型に入れ、高圧プレス成形機で成形する乾式成形が一般的である。本社工場には13台のプレス機があり、1日に約1.1万㎡ものタイルが成形される。
焼成の様を、窯の窓からのぞく。内部では1260℃の炎でタイルが焼成されている。20時間かけて焼成された後、ひび割れなどが生じないよう、ゆっくりと自然冷却される。その後の検品では、人間の鋭敏な目と手により不良品を見つけ出す。
選別されたタイルは自動紙張機で台紙に張られ、施工しやすいようにユニットに。検品ではじかれた不良品は再利用に回される。釉薬がかかっていても再利用できるため、工場からは産業廃棄物がほとんど出ない。
同社の釉薬研究所「若尾化学」では、釉薬の新しい機能やカラーなどの開発を行っている。「スワンタイル」はすでに1200種類、5000色のラインナップを備えているが、それ以外にも、個別のニーズに応じたカラーをつくることもできる。
防汚機能のあるタイルの効果をマジックペンで体験。コーティングで防汚機能を付加したものではなく、釉薬と焼き方の工夫によって、いわばタイルの体質を変えているため、効果が長く維持される。右の写真はJR多治見駅の施工例。左上の暗い色調のタイルは別の企業の製品で、当初は同じ色調だったが、10年も経たずにこれだけの差に。
取材・文/長井 美暁
※2019年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。