オフィスで働く人、自宅で働く人、家族のために家事という仕事を選んだ人、家族との生活やライフワークに合わせて移住する人や二拠点生活をするなど、働き方の選択肢が増えるにつれ、選ぶ上で大切に思うことやこだわりも多種多様に変化していきます。

建築家やデザイナー、執筆家といった有識者やライフスタイルに合わせた働き方を選んだパネラーに、自分らしいワークスタイルに欠かせないものについてインタビューしました。
それぞれのニーズや背景などから、自分らしく働く・暮らすことを考えてみませんか。

これからの暮らしとワークスタイル

住宅やインテリアにも様々な変化をもたらしている昨今の「職住融合」時代。
リビングデザインセンターOZONEでは、さまざまなライフワークを実践している人たちの声をご紹介するほか、“これからの暮らしとワークスタイル”に関するセミナ、仕事のオンオフに取り入れたいアイテムなどを展示でご紹介します。

01.大平 一枝(作家・エッセイスト)

report-interview1579_02.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
自分と社会をつなぐ通路のようなもの。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
窓です。どんなに小さくても、景色が悪くても、窓から外が見えるところで執筆をすると落ち着きます。暮らしのエッセイを書くときは、ガラス戸から通りが見えるカフェに行くこともあります。スーパーの袋を自転車のカゴに積んだ人や、楽器を担いだスタジオ帰りの若者を見るとはなしに見ていると、生活や日常の気配が伝わり、不思議と筆が進む。自宅の仕事場は、天窓含めて4面あります。夏は恐ろしいほど日焼けしますが、私にとって必須のものです。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
個人的には、インプットとアウトプットをバランスよく保ち、自分の内側をゆたかに満たしながら、働くことができるようになりたい。
社会全般としては、育児や夫の転勤などによって職歴にブランクのある女性、突きつめたい職務を男性と平等に追求できる女性のワークスタイルが整って欲しい。最低でも平日、会社員が子どもと夕食を囲める時間帯に普通に帰宅できる労働環境を切に願います。

report-interview1579_01.png

大平 一枝(作家・エッセイスト)

長野県生まれ。編集プロダクションを経て1995年に独立。 エッセイや、市井の生活者を独自の目線で描くルポルタージュコラムなどを著書多数。 近刊にエッセイ集『人生フルーツサンド(大和書房)』、新刊に『正解のない雑談 言葉にできないモヤモヤとの付き合い方(KADOKAWA)』。『こんなふうに、暮らしと人を書いてきた(平凡社)』5月発売。連載に『東京の台所2』(朝日新聞デジタルマガジン「&w」)など。

02.宮崎 晃吉(建築家/株式会社 HAGISO 代表取締役)

report-interview1579_04.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
チームと同じ時間を共有する場所。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
コロナ禍でリモートワークふくめオフィスに行かずに仕事ができる機会は増えました。一人で仕事をしていると、集中したいときは良いのですがちょっとした相談や仕事の分担ができないままどんどん溜まっていく傾向になるなという実感があります。孤独を感じたり一人で仕事を抱えている感覚がたまらないように、自然なコミュニケーションが生まれる空間と習慣づくりが重要だと思っています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
仕事の種類が多様化しているので一概にはいえませんが、定点としてのオフィスの存在意義はどこでも仕事ができるようになったからこそ逆説的に増している気がしています。定点としての意味は空間だけが作れるものではないので、チームのなかでのルールづくりや企業文化と合わせた独自のあり方が、社会にどんどん生まれていくことが大切ではないでしょうか。

report-interview1579_03.png

宮崎 晃吉(建築家/株式会社 HAGISO 代表取締役)

建築設計やプロデュースを行うかたわら、自社事業として東京・谷中を中心エリアとした築古のアパートや住宅をリノベーションした飲食、宿泊事業を設計・運営している。 建築の枠を超え、「世界に誇れる日常を生み出す」ことを目的として文化を育む場づくりを行っている。

03.弦間 康仁(照明デザイナー/Feel Lab代表)

report-interview1579_06.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
形式にこだわらず発想したことをすぐに実践できる環境。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
自然のリズムをワークスタイルに取り入れることを大切にしています。週に1日は静けさの中で鳥や風の音だけを聞きながらデスクワークを行ったり、近年は畑で育てた植物を創作活動に活かし、人の暮らしに馴染ませていくデザインの取り組みを行っています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
人の個性は千差万別なので働き方や環境にも多数の選択肢が必要だと考えています。性別年齢に関係なくやりたいことに何時からでもチャレンジ出来る、そして例え失敗してもまた実行すれば良いと思える柔軟な社会環境が望ましいですね。

report-interview1579_05.png

弦間 康仁(照明デザイナー/Feel Lab代表)

「暗がりを愉しむ」をテーマに植物園や博物館、茶室等の空間創作を行うほか、舞台照明家、アーティスト、建築家との空間コラボレーション作品も多数。2015年にオリジナル商品「2Wシリーズ」を発表。国内外の展示会で高評価を得る。近年では自家栽培した植物で灯りを制作し、「心の静寂」に誘う陰影表現に力を注いでいる。

04.中原 慎一郎(株式会社コンランショップ・ジャパン代表取締役社長)

report-interview1579_08.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
コミュニケーションをとる上でオープンであることが大切。
インスピレーションを得たものをディスプレイしたり。
インスタレーションしたり。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
行動的に外でも動いて、得たものをワークスペースでみんなにシェアしたり、それを具体的に形にするために練るための場所は必要です。その為にはそのアイデアや、発想を広げてくれるような雰囲気が大切だと思います。
いろいろなところにその余白が必要で、作業するところ、考えるところ、分析するところは別の雰囲気であるとよりいいかと考えています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
様々な個人の使い方に対応できるという意味では、オフィス然とせず、かといって家のようでもなく、ミュージアムや、カフェ、図書館のようなオープンだけども、コミュニケーションも取れる公的な要素もありながらも自由さが求められるのかなと思います。
時間の使い方がまだまだ日本の場合は余裕なく勿体無いと感じます。クリエイティブな発想が生み出されるにはそれだけの場所にも余裕が必要です。その為の資料や、素材も近くに置いておけるといいですね。

report-interview1579_07.png

中原 慎一郎(株式会社コンランショップ・ジャパン代表取締役社長)

2022年4月に就任後、路面店となる代官山店、11月には麻布台ヒルズにレストランを併設した東京店をオープン。家具を中心としたインテリアデザイン、企業とコラボレーションしたプロダクトデザインも行っている。デザインを通して良い風景を作ることをテーマに活動している。

05.ラウラ・コピロウ

report-interview1579_10.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
貢献できる場所。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
働くことで、貢献や自己実現できるのが重要だと思っています。 幸せを感じる普遍的な要素の一つとして「貢献」、自分の人生に意味があるというのが挙げられます。
私はフィンランドのデザインが小さい時から大好きで、フィンランドのライフスタイル、サウナやデザインなどを日本で発信することで日本や日本人に貢献できると実感し、フィンランドのためにもなっていると信じていますので、仕事にとても遣り甲斐を感じています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
自分のために、自分のペースで働きたい人が増え、人とつながるツールが普及し、みんなが同じ時間に同じ場所で働く必要性がなくなったと思います。 自分と異なる働き方も受け入れることで、フラットな社会が生まれると考えています。
また、会社のためではなく、自分のために仕事することと、仕事も休みも同じぐらい大切だと信じています。

report-interview1579_09.png

ラウラ・コピロウ

北欧フィンランド・エスポー市出身。高校生の時に函館の高校へ留学し、ヘルシンキ大学に在学中に早稲田大学に留学。 その後、日本政府(文部科学省)奨学金留学生として北海道大学大学院に入学・修了。日本大手企業での就職を経て、フィンランドのデザインやライフスタイル、サウナを日本で広める活動を行っている。また、パフェ愛好家としてその魅力をInstagram(@laura_finrando)で発信するインフルエンサーとしても活躍中。TV・ラジオ番組やイベントにも多数出演する。

06.どい ちなつ(料理家)

report-interview1579_12.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
風通しの良いオープンな場で、ちょっと特別。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
料理を生業とする私の働く場所は、主にキッチンと呼んでいる改装した古い小屋です。そこには使い勝手が良くて、気に入った道具類と少しの家具を置いています。季節折々に育つ畑のハーブや野の草を摘んでキッチンに飾ることは、心が整う一つの方法です。それは仕事のアイデア作りにもなりますから欠かすことはできません。身近な自然とそこに生きる動物や植物をお手本に、しなやかでシンプルに暮らしたいものです。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
朝一番の光で目覚め、今を感じてみる。新鮮な空気を胸いっぱいに吸って、小鳥の声に耳を傾ける。身近なところで採れた季節の産物を料理して、ひとりで静かに味わったり。たまには十分に時間をかけて自分をじっくり観察してみる、いつでも余白を持つことを心がけ、ゆっくりとこつこつとでも進み続けてみる。日が暮れたら、美味しい料理をだれかと食べて今日を労う。こんなあたりまえの日常がこの世界の何かの役に立っていたら嬉しい。わたしはそんな幸せな毎日を過ごしたい。

report-interview1579_11.png

どい ちなつ(料理家)

「食べることは体だけでなく心にも響く」と実感したことから料理家として活動を開始。2012年に東京から故郷の淡路島に拠点を移し、自然の変化に意識を向けながら季節を感じて暮らし、料理教室を開催。「心に風」の名前でハーブなどのプロダクトも届けている。

07.若林 牧子(食と農のコーディネーター)

report-interview1579_14.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
根っこにあるもの、ルーツを追求する場所。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
無機的なものにも有機性を求めていきたい。世の中に存在するものはすべて可能性に満ち ていると考えます。また、何気ないものにこそ、目を向けてみるとそれが主語になり、 生き生きとします。土から生まれた命、それを美味しく育てる人の愛情や努力、それを運ぶ人、美味しく調理する人。暮らしの空間であれば細部に目を向けたり、余白や間を大切にしたいと思います。結果ではなく、そこに向かうプロセスに光を当てることに価値を感じます。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
テレワークとの併用など、昨今の働き方は時間的な余裕を生みました。働き方が「生き方」になった今、たとえば、農業や畜産業は24時間生きものと対峙している分、「休む」という観念がありません。楽しいことも辛いことも仕事にはつきものですが、その全てが“生きること”の面白さになっていくので、暮らしと仕事を分けない、一緒にまるごと捉えていくスタイルが、今後のワークスタイルになっていくといいなと思います。

report-interview1579_13.png

若林 牧子(食と農のコーディネーター)

夫の転勤先である四国松山へ転居、各地を巡るうち、豊穣な土地が育む食材やその文化に触発される。食に関する資格を多種取得。主に野菜ソムリエ活動が本格化し、直売所クッキングスタジオ運営、飲食店とのコラボ企画など「食と農で繋がる人のえにし」をテーマに講座展開。2013年帰京後、東京の伝統野菜「江戸東京野菜」に出会う。野菜ソムリエコミュニティTOKYO代表を経て、2023年江戸東京野菜コンシェルジュ協会理事。

08.岡村 フサ子(書店店主)

report-interview1579_16.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
主客互いに発見を分かち合う遊び場で学び場。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
「ひとや土地を感じる」をフィルターに、本と雑貨をセレクトしています。まずは店主夫婦の出身地である「青森」と「熊本」から、それぞれの土地にまつわる作家や出版社の書籍をピックアップ。あわせて、「読書のおとも」にしていただけるような伝統工芸の雑貨(ブックカバーやしおりや和紅茶など)も。本屋もまた一つの小さな「土地」。本だけでなく「豊かな読書時間」のヒントが見つかるような、宝探しのサードプレイスでありたいです。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
青森と熊本の魅力を本や雑貨に託して東京という中間地点で発信している今からステップアップして、「動く青熊書店」となって実際に青森や熊本を巡回するツアースタイルができたら最高です。その土地に行ってみて初めて分かることがあるし、学ぶこともたくさんあることでしょう。土地と土地が人間同士のようにそれぞれの場所に出向いてつながる。本屋に限らず、いろんな業態で叶えられることかもしれません。

report-interview1579_15.png

岡村 フサ子(書店店主)

熊本でタウン誌や新聞社の編集者・ライターの仕事をする中、熊本の魅力を全国に広めたいと上京。東京での編集業を経て、今年、東京都中小企業振興公社が開業支援として運営する自由が丘のチャレンジショップ内に期間限定で青熊書店を創業した。神保町の共同書店「PASSAGE by ALLREVIEWS」にも同店の棚を持つ。

09.今井 康徳(飛騨フォレスト株式会社 代表取締役)

report-interview1579_18.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
自分が好きなアイテムに囲まれた空間。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
リラックスできる環境はとても大切と考えています。私は主にデスクワークのため、植物や熱帯魚、アンティーク雑貨を配置してリラックスできる空間にしています。仕事柄、優れた構造やデザインに興味を持っており、文房具など道具選びにおいては、価格よりもこだわりのあるデザインや機能性を選んでいます。皆様にこだわりの商品をお届けできるよう私も道具にこだわっています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
デジタル化する中で、お客様にメリットをもたらすAIは活用しつつ、アナログの大切さを強調し続けたいです。デジタル化は便利ですが、アナログな手法は集中力や創造性を促進し、人間らしさがあります。紙やペンでの手書きや、対面のコミュニケーションは感情やアイデアを豊かに伝えることができています。デジタルとアナログのバランスが未来のワークスタイルにおいて必要不可欠と考えています。

report-interview1579_17.png

今井 康徳(飛騨フォレスト株式会社 代表取締役)

「健康ひのき畳」の開発からスタートし、小上がりや畳ベッドなど、伝統の技を生かしつつ、現代の住まいに合ったモノづくりを続ける。オンリーワンの自社製品を生み出す初代の熱い思いを受け継ぎ、新しい製品の開発を常に試みている。近年では特殊な研磨加工を施したひのきチップを採用した「ひのき枕」が好評を得ている。

10.鈴木 信吾(株式会社イマクリエ 代表取締役)

report-interview1579_20.png


Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
オフィス・自宅・コーワーキングスペースなど、内容やアウトプットに合わせて必要な時に必要な場所を選ぶ。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
私は出張が多いので、旅をしている時でもいつもと変わらず働ける環境づくりにはこだわります。特に働く場所の選び方は重要で、例えば、企画を練るような仕事の時は、アイデアが浮かんできそうな場所を選び、ミーティングの時は、コワーキングスペースの個室やテレワークブースを借りる。一方、集中して作業を行うときには、ホテルの部屋に籠って行うといった具合に、求めるアウトプットに合わせて場所を選ぶようにしています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
テレワークがもっと一般化し、場所だけでなく、時間にも縛られない働き方が広範に普及する社会が理想です。日本の人口減少と労働力不足の問題を解決するためには、限られた労働力を効率的に活用する新たなシステムが必要です。複業を通じて個々のスキルや経験を多くの組織で活かすこと、または時短や週数日の勤務でも価値ある仕事ができるような、多様性を尊重したワークスタイルが広く認められる社会を目指すべきだと思います。

report-interview1579_19.png

鈴木 信吾(株式会社イマクリエ 代表取締役)

2007年創業。東日本大震災を機にテレワークを導入し、社員全員フルリモート勤務の「完全テレワーク型事業モデル」を確立。テレワークを活用した雇用創出・企業誘致等の地方創生支援事業、企業向けBPO事業を展開。「地方創生テレワークアワード 地方創生担当大臣賞」、「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」受賞。


十人十色な暮らしと働き方 Vol.1【WEB特集】はこちら

※2024年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

暮らしや住まいに関するOZONEの最新情報をメールマガジンでお届けします。

mailmagzine.jpg

リビングデザインセンターOZONEで開催するイベントやセミナー情報のほか、暮らしやライフスタイルに関する情報を無料のメールマガジンでお届けします。(第3木曜日配信)

登録はこちら

※建築・インテリアをお仕事にされているプロフェッショナル向けのメールマガジン登録はこちら