オフィスで働く人、自宅で働く人、家族のために家事という仕事を選んだ人、家族との生活やライフワークに合わせて移住する人や二拠点生活をするなど、働き方の選択肢が増えるにつれ、選ぶ上で大切に思うことやこだわりも多種多様に変化していきます。

建築家やデザイナー、執筆家といった有識者やライフスタイルに合わせた働き方を選んだパネラーに、自分らしいワークスタイルに欠かせないものについてインタビューしました。
それぞれのニーズや背景などから、自分らしく働く・暮らすことを考えてみませんか。

これからの暮らしとワークスタイル

住宅やインテリアにも様々な変化をもたらしている昨今の「職住融合」時代。
リビングデザインセンターOZONEでは、さまざまなライフワークを実践している人たちの声をご紹介するほか、“これからの暮らしとワークスタイル”に関するセミナ、仕事のオンオフに取り入れたいアイテムなどを展示でご紹介します。

01.西村 琢(ソウ・エクスペリエンス株式会社 代表取締役)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
「リストから選ぶだけ」から距離を置く。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
リストから選ぶだけなら何事も簡単に済ませられますが、それだけでは楽しさ半減です。仕事も働く場所も試行錯誤しながらつくる過程こそが面白いと思うので。
仕事は自分や仲間たちとつくり、オフィスは物件選びこそネットを頼ったとしても、内装や家具は自分で探したり友だちを頼ってみたりする。
仕事内容やオフィス空間の見た目以上に、そういうことへのこだわりが強いです。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
仕事や働き方全般に対する満足度の平均点、それが少しずつでも上がっていくと良いなと思います。数値化は難しく、安易にするべきでもない気がするので、あくまでも肌感に頼りつつ手探りしながら。自分の周辺はもちろん、社会全体の平均点も同じように上がっていって欲しいです。
特にコロナ禍で明らかになったエッセンシャルワーカーや、学校の教員、保育施設で働く方々。社会は縁の下の力持ちに支えられているので、少し負荷のかかり過ぎている場所が少しずつ良くなっていくことを願っています。

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西村 琢(ソウ・エクスペリエンス株式会社 代表取締役)

食事、レジャー、ものづくりなどの「体験ギフト」の企画販売を行うソウ・エクスペリエンス株式会社を2005 年に起業。日本で初のユニークな事業であったことに加え、子連れ出勤や副業OK、週休3日勤務といった社員の多様な働き方でも注目を集めている。妻と3人の男児(中学1年生、小学4年生、3歳)と暮らす。

02.松井 章(鮎川ハウスオーナー兼認定NPO法人みちのくトレイルクラブ理事)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
三陸復興国立公園で暮らしながら東京と2地域居住で暮らす・働く


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
極端に違う環境に身を置きつつ行き来するので、その差異に敏感になれます。例えば、三陸復興国立公園は世界三大漁場と呼ばれる良質な漁場であり、野生動物も多く生息する自然環境です。すると食でのアプローチは、スーパーや飲食店よりも、漁師や農家、時には猟師になることも多くあります。その違いからうまれる考えかたやひらめきは、暮らしや仕事のなかで大いに役立ちます。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
国立公園に研修やワーケーションでもいいのでできるだけ長く滞在し、様々な体験ツアーやプログラムに年1回はチャレンジするようなワークスタイルが企業の中でも当たり前になるといいと思います。自然環境に身を置くことで、都市生活での当たり前が当たり前じゃないことに気づくこともあり、それが個のウェルビーイングや生きる力に結びついたり、都市生活を今よりも豊かに感じるきっかけになることもあると思います。

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松井 章(鮎川ハウスオーナー兼認定NPO法人みちのくトレイルクラブ理事)

2020年より三陸復興国立公園南端にある牡鹿半島と東京の2地域居住をはじめ、現在国立公園に暮らす民泊「鮎川ハウス」を運営。みちのくトレイルクラブでは、太平洋沿岸沿いの自然の中を約1,000km歩くロングトレイル“みちのく潮風トレイル”を環境省と共に管理・運営。自然と共にある暮らしや震災の記憶など、世界とつながる歩く旅の文化とともに発信している。

03.鹿内 健(建築家/Sデザインファーム株式会社 代表取締役・株式会社FUU 取締役)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
職場・家・自然など居心地の良い場所で働く。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
最近自邸を建てました。半分は職場で働き、半分は家で働くワークスタイルです。自邸は神社の参道に面しており自然の中で暮らしているような家です。最近は梅が咲いています。もうすぐ桜、秋には紅葉が楽しめます。鳥が庭の土をついばんでいたり、野良猫が我が家の猫たちに気付かず外リビングを横断するのを見ていると微笑ましくなります。ふと見上げた瞬間にハッとする風景や情景が見えることが実は働く場には大事だと思います。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
従来の働く場は効率性・合理性を優先する場所でした。そういった場所で働くから数字を追い求めすぎるかもしれないです。我が家のような微笑ましい状況を見ながら仕事をするのも、最近悪くないなと思います。鳥たちが土から餌をついばむ様子から自然の循環を考えたり、猫たちの自由さがあれば住みやすい社会になるかもしれないと想像したり。そのような想像が仕事に入り込む事が「未来をつくるために」必要なのかもしれません。

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鹿内 健(建築家/Sデザインファーム株式会社 代表取締役・株式会社FUU 取締役)

「日常」に「心おどる空間」をテーマに日々の暮らしの場となる室内空間は少ないエネルギーで暖かく涼しい高断熱・高気密な住宅を設計しています。 また安心で快適に過ごせる「日常の空間」に加え、自然のちょっとした変化を楽しめる「心おどる空間」を室内や屋外に提案しています。 性能の高さとデザイン性のバランスを取り共存させていく事が、住宅の心地良さを高めると考えています。

04.和田 浩一(インテリア・キッチンデザイナー/STUDIO KAZ代表)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
ONになり、それを維持できるところ


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
ひとりだったり、チームだったり、座っていたり、電話だったり、さまざまな環境やスタイルで作業があり、それぞれに適した環境は違う。ひとりの時は好きな音楽が流れ、好きな匂いが漂い、いつでも入れ立てのコーヒを飲むことができ、愛犬が膝の上で居眠りをしていたり、、、といった、「好き」に囲まれた場所がいい。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
今のワークスタイルを変えるのは難しい。僕はこのままでいい。実はコワーキングスペースは馴染めなくて、ちょっと苦手なのだが、以前高松で入ったコワーキングスペースは自由すぎて面白かったが、結局仕事にならなかった(笑)。とはいえ、慣れれば、そこから何か新しいことが起こりそうな予感はするので、コミュニティが盛んなワークスタイルもありかもしれない。

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和田 浩一(インテリア・キッチンデザイナー/STUDIO KAZ代表)

オーダーキッチンのエキスパートとして、空間デザイン・キッチンデザイン・プロダクトデザインやグラフィックデザインに携わる。これまで1000件以上のオーダーキッチンのデザイン・設計・コンサルティングに関わり、キッチン・設備機器メーカーなどのアドバイザーとしても活躍。専門学校で非常勤講師を務める傍ら、全国でセミナーや講演をこなす。
2014年に工務店向けコンサルティングとして『キッチンアカデミー』を主宰する。著書に『キッチンをつくる~ KITCHENING』(彰国社)、『世界で一番やさしいインテリア』(エクスナレッジ)、『世界で一番やさしい家具設計』(エクスナレッジ)他。グッドデザイン賞など受賞歴多数。

05.寺田 尚樹(建築家/株式会社インターオフィス代表取締役社長)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
一日を過ごす場、全ての場所です。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
お気に入りの家具や照明や小物とか、大好きなドリンクやスイーツでもいいし、それから心安らぐ景色など、何かひとつだけでいいので、視界にマイフェイバリットアイテムが入っているとその場所が自分用にカスタマイズされたような気持ちになります。
ちょっと巣作りするような感覚でしょうか?
自前の空間でなくても、ちょっと椅子の向きをずらして視界を変えてみるとか、卓上の小物のレイアウトを変えるとか、その場に能動的に関わることということがこだわりかもしれません。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
今後のワークスタイルとしてはプライベートとパブリックの2つのモードをうまく使い分けていくことが大切だと思います。プライベートは、自分自身に問いかけをして集中して自己完結的に考えをまとめていくような場面。そしてパブリックは、アイデアの交換など他者とのコミュニケーションによって仕事をドライブしていく状況。この2つのベストバランスを実現できるような、多様な環境がチョイスできるようになればいいと思います。

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寺田 尚樹(建築家/株式会社インターオフィス代表取締役社長)

輸入家具販売・製作や空間デザインを展開するインターオフィス代表を務め、幅広い領域で活躍するクリエイター。「人の気持ちを幸せにする、より良いプロダクトとより良い空間」を追求し、創造性を育む豊かな生活のための空間づくりに意欲的に取り組んでいる。2024年2月に、東京・青山にインテリアストア「MAARKETトーキョー」をオープンさせた。

06.細川 亜衣(料理家)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
自分が一番生き生きとできる場所です。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
自分や一緒に働くスタッフ、お客様、つまりその場を共有するすべての人にとって一番心地が良い場所であるように、建物、インテリア、エクステリア、さらに使う道具や身につけるものなどの選択にこだわりを持って選んでいます。また、そのような環境において自分自身の仕事が最良のクオリティーで行えるように、妥協をせず、時にブラッシュアップをするよう心がけています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
とにかく熊本の素晴らしい食材の魅力を知っていただけるように、この地にしっかりと腰をすえて、さまざまな世代や分野の方達とともに、国内外へ発信をできるよう考えています。私が熊本で主催するtaishojiをより多くの方々に訪れていただくことはもちろんのこと、2024年より始めた料理の映像制作と配信を通して、それが実現できればうれしく思います。

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細川 亜衣(料理家)

住まいのある熊本市の旧跡・泰勝寺跡に”taishoji”を設立。毎月の料理教室や”食べる会”、工芸の作家の展示会を主宰。料理の映像制作や海外での料理会など、さまざまな活動を行っている。主な著書に”食記帖”(リトルモア)、”朝食の本”(アノニマスタジオ)、taishoji cook book(晶文社)など。

07.田内 しょうこ(生活レシピ研究家・ライター)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
働く場所=わたしが生活する場所です。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
わたしにとって、仕事と生活は一体で24時間切り離せないもの。食べて眠って、料理して写真を撮って、文章を書いてまた食べ……とすべてが繋がったひとつの輪の中にあります。目から入る情報に左右されるので、仕事場(自宅)は、緑が見える環境で木材を使った内装に。あえて仕事、暮らし、家族も混在する有機的な空間にしています。ときには、外へ。作業によって、見えるものと聞こえる音を変えて環境を作り出すようにしています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
教室を少し広げることも含め、自分の居場所をもう少し地域や社会へと開かれた物理的な繋がりのあるものにしていけるとよいなと思っています。子が巣立つ時期が近づいていることも関係あるかもしれません。今後は社会へと繋がる縁側のような仕事場と、コクーンのような自分の居場所とを行き来しながら、やはり生活と仕事は切り離さず、ないまぜにしながらゆるやかに過ごしていきたいです。

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田内 しょうこ(生活レシピ研究家・ライター)

「時短料理をサステナブルな知恵に」をモットーに、一生の財産になる料理の知恵と、自分をいたわる食を伝える教室「サステナキッチン」を主宰。育児と仕事との両立に悩んだ経験から、時短料理やキッチン作りのセミナーを開催する。働く親のための「シンプルで美味しい子どもごはん」がライフワーク。キッチンから社会を考え、生活力のある子どもを育てるための情報を発信している。

08.杉原 広宣(合同会社monova代表)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
PCと頭と手があれば自由自在。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
どこでもできると言いつつ、新幹線や飛行機内だと考え事はできても、自分でも驚くほどアウトプットできる事柄が限られて、例えばスケジュールの予定の返事をするくらいの単純なことしかできなくなります。相手先との打ち合わせや店舗運営など場所に縛られる業務もありますが、業務の内容に応じて、空間を選んで、時間にも縛られずに朝から晩まで場所も時間も自由に、自分自身のクオリティが上がる設定を心がけています。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
リモートワークやオンライン会議が気兼ねなくできて、より効率的に業務ができるようになりました。今後は個人的には1日単位ではなく、数週間、数ヶ月の単位でいろんな地域に短期滞在しても滞ることなく仕事ができるようになるのを目指しています。地域に関わって仕事をしてきて、地域には固有の風景とともに固有の時間の流れがあるように感じます。それを深く実感するとより良い仕事ができるんじゃないかなと考えています。

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杉原 広宣(合同会社monova代表)

2000年〜2009年までリビングデザインセンターOZONEに勤務。日本各地の工芸品などのPR、商品開発に携わる。 独立後の2011年に日本のモノづくりのシェアショールーム「Japan creation space m o n o v a」をオープン。 ショールームの運営とともに全国各地の中小企業のモノづくりのアドバイザーを歴任。月の半分は出張で日本各地を回っている。
「Japan creation space monova(OZONE 5F)」詳細はこちら

09.瀬尾 良輔(瀬尾製作所株式会社 代表取締役社長)

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Q1:あなたにとって働く場所・スタイルとは?
伝統的な金属工芸が400年前から根付く町。


Q2:その場所やスタイルに求めるものやこだわりは?
ものづくりが好きです。
試行錯誤しながら自分の手を動かして何かが出来上がるとき、心が躍ります。会社に関わるいろいろな仕事があるので、それだけに集中することはできないのですが、やっぱり手を動かしたいときがある。私たちのベースはものづくりにあるので、それを鈍らせないようにという思いもあり、合間を見つけて工場に入り手を動かしています。そんなとき、新しいアイディアがふっと浮かぶ時もあるんです。


Q3:今後のワークスタイルがどのようになるとよいか?
面白い仕事が都市への一極集中ではなく、僕たちがいるような地方のいろんな会社でできているような世界が作られて、その結果、一方的ではない都市と地方の人的移動が増えるようなワークスタイルに憧れます。
職人のように手を動かしながらも、顧客に向けて新たな価値の提案ができるような人が数多く生まれ、クリエイティブと職人の区分けが曖昧になっていくと、もっと面白い仕事が増えていくような気がしています。

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瀬尾 良輔(瀬尾製作所株式会社 代表取締役社長)

流通関係のシステム構築や運用業務等、IT関連の仕事に従事後、2008年に生まれ故郷である富山にUターンし、家業である瀬尾製作所(株)に入社。高岡市の伝統産業である「高岡銅器」に関わる金属を素材とした「ものづくり」を学びながら、製品開発に取り組む。2018年より同社代表取締役に就任。

「瀬尾製作所展示室 SEO TOKYO SHOWROOM(OZONE 7F)」詳細はこちら


十人十色な暮らしと働き方 Vol.2【WEB特集】はこちら

※2024年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

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