住宅設備商社として国内1位の売上高を誇る「ジャパン建材株式会社」や、建材商社「通商株式会社」(本社:大阪)などを擁するJKホールディングス株式会社(JKHD)が、OZONE 6Fで運営しているショールーム「JKHD 未来研究所 東京ショールーム」。特定分野の自社製品を紹介する「メーカー型ショールーム」が多く集うOZONEの中にあって、様々なメーカーの商材を取り上げる「商社型ショールーム」を展開しているのが大きな特徴です。本ショールームの成り立ちと戦略について、通商株式会社 東京支店の千葉真人さん、渡邊健太さん、ジャパン建材株式会社 商品開発課の石原未来さんにお話しを伺いました。

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リビングデザインセンターOZONE 6F【JKHD 未来研究所 東京ショールーム】

「未来研究所」という名称に込めた思い

―まずは、このショールームの運営主体についてお話ください。

千葉 弊社はジャパン建材や通商を統括するJKホールディングスのグループ企業となります。私たち通商は他社に先駆け、流通革命ともいえる流通経路の短縮化を図り、工務店様への「直需販売方式」を取り入れています。 いち早く「情報」の重要性を見極め、経営戦略の核に据え、合理的な情報・物流ネットワークを構築、より良い商品をより適正な価格でよりタイムリーに提供してきました。現在、2万種類以上の商品を中心にハウスメーカー・ゼネコン・デベロッパー・一般工務店など約3800社に販売。多様化・個性化する顧客ニーズに対応しています。

このショールームは2021年4月のオープンですが、当初は「通商未来研究所 東京ショールーム」という名称で、私たち通商が単独で運営していました。しかしその後、JKホールディングスというより大きな枠組みから、さらに多様な商品をご紹介できるように体制を変更したものです。2022年10月からは名称も「JKHD 未来研究所 東京ショールーム」に変え、再出発しています。JKHD傘下にはジャパン建材と通商の2社以外にも多くの企業が集っていますので、その力を結集し、複合的なシナジー効果が発揮できるような、そんな場にしていきたいと思っています。

―「未来研究所」というショールーム名も、とても個性的で印象に残りますね。

千葉 名称をどうすべきか、開設準備中にとても悩んだんですよ。新しい生活の形を提案する拠点にふさわしい、ワクワクするような名前はないものかと考え、広告代理店出身の知り合いに相談したんです。そうしたら「未来研究所」という名称を提案してくださって。「研究所」と呼べるほど大層なことはできないかもしれませんが、どんな方がいらしても、商社ならではの品揃えで、お客様に何かしらの新しい発見を提供できるような場にしていきたい…… そういう思いを込めて、この名称を採用しました。運営の枠組みが通商からJKHDに拡がる際も、「未来研究所」という名前は面白いからぜひ残そうじゃないか、という話になりました。

―運営主体が通商からJKHDに変わったことで、何か大きな変化はあったのでしょうか?

千葉 やはりご紹介できる商材の数と量が格段に増えた点が大きいですね。ジャパン建材は「Bulls(ブルズ)」というオリジナルのプライベートブランドを持っていまして、そのカタログには住宅の建設や維持に必要なあらゆる建材・設備・資材が網羅されています。たとえばキッチンを目当てにOZONEを訪れ、当ショールームに足を止めていただいた方には、Bullsのカタログも眺めていただき、付帯する水回り設備や小物、備品までをまとめてコーディネートする形でご提案できるわけです。加えて、当グループには施工会社もありますので、たとえばシステムキッチンと食洗器をセットで発注いただいた場合、その取付工事までを責任を持って請け負わせていただくことも可能です。

渡邊 家を建てる際、施主様は決めなくてはいけないことが多いですし、そこで長いこと悩んでしまっては設計・施工が滞ってしまいます。そこでまずは「Bulls」のカタログの中から採用する建材や設備を決めていき、どうしても更に検討したい部分にだけ手を広げましょう……というように、一つの基準線として活用していただくことをお勧めしています。このショールームは、その延長にある、実際にモノを見て、触れて、確かめることのできる場所としての活用を考えています。選択の幅をご用意し、手間と時間を節約し、取付けや設置まで責任を持つ安心感を提供する…… そんなご提案ができる体制を整えています。

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ジャパン建材のプライベートブランド「Bulls(ブルズ)」の2023年版カタログより。取り扱う商材の幅広さと網羅性が一目瞭然で実感できる目次ページの図。

「商社型ショールーム」ならではの提案

―様々なメーカーの商材に加え、総合的な品揃えのプライベートブランドをも扱うとなると、ショールームに展示する商材の絞り込みやレイアウト方法なども、メーカー型のショールームとは違ってくる面があるのではないでしょうか?

千葉 確かにそのとおりです。商材の数量やラインナップで見せていくというよりは、多様なジャンルの商材を扱える利点を活かし、キッチン・ダイニング全体、リビング全体など、生活シーンをイメージしていただけるようなリアルなインテリアのレイアウトを目指していますし、そのコーディネート自体をご提案するようなショールーム構成、および、お客様のご案内の仕方を心掛けています。

たとえば床材を探しているお客様がいらした場合、木質フローリング、タイル、シートなど、メーカーや素材の違いをまたぐ形で質感や踏み心地の違いなどを複合的にお試しいただけます。これは、単独メーカーのショールームさんにはなかなか難しいことかもしれません。さらに言えば、そこで一つの床材を気に入っていただけた場合、そこに似合うキッチンや壁紙、建具、収納などを連鎖的にトータル・コーディネートしてご提案することができるわけです。最近のエンドユーザーは、インターネットで丹念に情報を吟味して、床材はこれ、キッチンはこれと、かなり具体的なイメージを持ってショールームに訪れる方が多くなっています。しかし、それぞれのセレクトは素晴らしくても、1+1が必ずしも2になるとは限らないのがインテリアの難しいところ。結果的にバランスを欠いた残念な仕上がりになってしまうことも少なくありません。そこを総合的にコーディネートしてご提案できるのが、このショールームの大きな特徴であり、私たちの強みであると言えるでしょう。

渡邊 このショールームでもご紹介しているジャパン建材の「セレクト建材プロジェクト」というチームが提案する造作洗面台「moki」シリーズは、テイスト別に4つのスタイルの洗面台、および水栓金具や照明などの周辺設備、ミラーやタオルレールなどの資材を揃えているブランドです。お客様のご希望に応じて、すべての部材が、メーカーを横断したラインナップの中から入れ替えることが可能ですが、4つのスタイルに系統立てて選択肢を既にコーディネートしてあるので、お客様のご希望に添いながらも、全体のテイストが大きく崩れることのないよう工夫されています。こうした取り組みなどは、まさに「商社ならでは」の視点が効いているものと言えるかもしれませんね。

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ジャパン建材の造作洗面台ブランド「moki」の展示コーナーおよびカタログ。メーカーの垣根を超え、デザイン性の高い商品があらかじめセレクトされている。従来のユニットタイプ洗面台を発注するような手軽さで、洗面台まわりの総合的なセミオーダーが実現できる。

―現在のショールームのレイアウトでは、ドイツのメーカー「BOSCH」製の食器洗浄機を大きくフィーチャーしたキッチンや、ペットと暮らすためのリビングなどがスペースを占めていますが、これらの絞り込みには何か意図があるのでしょうか?

千葉 本当なら、私たちのグループでご提案可能なあらゆるコーディネートをお見せしたいところですが、とてもスペースが足りません。そこで、今、もっともご紹介したい旬の商品などをセレクトしてレイアウトしているというのが正直なところです。ですので、今後も頻繁に展示替えをしていく予定でいます。

石原 現在ジャパン建材では、「Bulls」を中心とした自社製品の中で、積極的に新たな領域を開拓していこうとしているんですが、その中心になっているのが、私が所属している商品開発課です。ジャパン建材からこのショールーム運営に参加しているチームも、そこが中核となっています。

これまでは普遍的な建材や設備、副資材などを中心にカタログを増やしてきたわけですが、これからはもっとクリエイティブな領域にも挑戦したり、デザイン性を高めたり、今までに組んだことのないメーカーさんとパートナーシップを結んだりして、「Bulls」のブランドイメージを変えていこうという動きがあります。ペットと暮らすための様々な建材や設備を特集的に展示しているのも、その一環です。昨年の夏からBOSCH製の食器洗浄機が「Bulls」カタログに加わったので、秋にはそれを前面に出したレイアウトにリニューアルしました。それも、新たなニーズ、新たなブランド価値を打ち出すためになります。BOSCHの公式ショールーム以外では、唯一、食器洗浄機全機種を取り揃えている場所になっていますし、予約なしのお客様でも、自由に触れていただけるようにしてあります。

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2023年秋に小リニューアルされ、BOSCH製の食器洗浄機を前面に出したレイアウトとなった。

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ペットとの暮らし方を提案する展示コーナー。

エンドユーザーとプロユーザーの両対応を目指す

―コーディネート提案に強い「商社型ショールーム」となると、一般のエンドユーザーの方の利用に向いているように思いますが、実際、エンドユーザーとプロユーザーの利用の割合はどのくらいなのでしょうか?

渡邊 現状では、当ショールームを訪れるお客様の80%以上がエンドユーザーのお客様です。様々な目的でOZONEを訪れる方に、他のショールーム様の見学と合わせて立ち寄っていただいている形です。

石原 ジャパン建材では、年に一回、プロ向けの「ジャパン建材フェア」という大きなコンベンションを東京ビッグサイトで開催していますが、イベントだけでなく、常にJKHDの商品を見られる場所があれば……という声があるのも確かです。今後はそうしたプロ向けのニーズに応えられるようにしていきたいと思っています。

渡邊 他には、工務店サイドと施主サイドの間を取り持つような場として、このショールームを使っていただく機会を増やしていきたいと考えております。室内のレイアウトが決まり、そこにどんな商品を当てはめて置いていくか……という検討の段階で、施主様と工務店様に揃ってショールームに来ていただく。工務店サイドと施主サイド、そして商社である私たちの三者が顔を合わせ、施主の重視する点や不満点、工務店側の都合、予算やスケジュールの問題など話し合う場にしていただき、私たちがその水先案内人を務めるというイメージです。二者だけが直接話すと対立してしまうような事態を避けるべく、私たちが中立の立場から豊富な商品知識を駆使して客観的な解決策をご提示するような形になります。こうした役割を目指すというのは、OZONEと似たところがあるのかもしれませんね。このショールームでは、特に商社としてできることから、工務店と施主、建築家をつなぐ役割を担っていきたいと思っています。

―施主の要望に翻弄される工務店、プロである工務店に従わざるを得ない施主、両者の板挟みになってしまう建築家……など、住宅建設の世界に起こりがちな、このような残念なコンフリクト(葛藤・対立)を防ぐため、ショールームがその豊富な品揃えを使って新たな判断材料、新たな選択肢を提供し、医療制度における「セカンドオピニオン」のようなサジェスチョンを行う。物件当事者には難しいこうした動きができるのも、多様な商材を取り扱う「商社型ショールーム」ならではのこと。エンドユーザーとプロユーザーを両対応でサポートしつつ、誰もが幸せになれる家づくりのためにこうした役割が果たせるならば、まさに「未来研究所」の名にふさわしい場となっていくのではないでしょうか。

―ショールームよりメッセージ

数多くのBulls商品の中から、特に紹介したいアイテムを“厳選”して展示しております。それだけでなく、ここでしか見られない貴重なブランドや、是非とも世の中に広めたい商品など幅広く紹介しております。メーカー・ジャンルの垣根を超えた“商社のショールーム”へ是非一度お越しください。

※文中敬称略


※2024年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

JKHD 未来研究所 東京ショールーム

館内ショールーム

日本最大規模の住宅建材卸「JKホールディングスグループ」が運営する全国初のショールーム。
85年以上にわたり住宅関連資材の仕入れ・販売業を行ってきた知識・経験を活かし、厳選した商品・空間をご提案します。
プライベートブランド、トレンドを抑えたセレクト建材をはじめ、インテリアに溶け込むキッチン・ペットと暮らす建材・スマートホーム体験などココでしか見られない商品とお待ちしています。