2020年から、設計・施工のプロフェッショナルを対象に、館内ショールームの製品をお試しいただく『モニター企画』を実施し、多くの設計者にエントリーをいただきました。ここでは、採用された施工事例を数回に分けてご紹介します。
『モニター企画』の詳細はこちら(※募集は終了しています)


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朝日ウッドテックの木質系の壁・天井材シリーズ「the wall』を採用した住宅が今夏完成した。この住宅を設計した橋本光秀さん(創楽建築設計事務所)と、朝日ウッドテック東京ショールーム リーダーの村田道彦さん、施主の奥瀬さんに、家づくりと「the wall」の魅力について語ってもらった。

―施主の奥瀬さんと設計者の橋本さんが知り合ったきっかけを教えてください。

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施主:奥瀬さん

奥瀬3年前に主人の実家の建て替え計画が持ち上がり、義母から家づくりの相談を受けたんです。私の実家は北海道で材木業を営んでおりまして、父から横須賀にいい工務店があると教えてもらい、そこの社長さんが紹介してくれた設計者が橋本さんでした。

橋本奥瀬様は材木屋のお嬢さんということもあり、とても建築に詳しくて義理のお母さまのサポートをしながらご主人のご実家の家づくりの打ち合わせによく参加されていたんです。そこでお互いの趣味趣向や好きなデザインについてお話する機会があって、のちに奥瀬様のご自宅の設計を依頼していただきました。

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設計者:橋本光秀氏

奥瀬私たち家族は元々都内に住んでいたのですが、主人の実家が横須賀にあることもあって、いずれは近くに家を建てたいと思っていました。中でも憧れだったのが鎌倉で去年の4月にようやくいい土地が見つかり、本格的な家づくりがスタートしました。

橋本奥瀬様の要望は大きく2つありまして、まず広いリビングダイニングキッチンがほしいということ、奥様の趣味である陶芸ができるアトリエがほしいということ。そして鎌倉という立地を考慮して、風向明媚な景観に寄り添う建築でありたいと考えました。
そこでファサードは思い切って開口部を無くしたデザインを提案させていただきました。道路側に開口部がなくても中庭を設けてそこから光と風を取り入れることにして、1階は天井が高いリビングにダイニング、キッチンがひとつながりにつながる大空間をつくりました。

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―今回、朝日ウッドテックの「the wall」を1階リビングの天井と壁の一部に採用されています。「the wall」を使おうと思った理由をお聞かせください。

橋本実は「the wall」を使いたいというのは奥瀬様からのご提案でした。設計のかなり初期の段階から「『the wall』を天井に使いたい」とおっしゃっていたんですよね。

村田それは嬉しいですね。弊社の製品はどこで知ったのですか。

奥瀬昔観た映画の中で、板張りの天井が素敵なワンシーンがとても印象的で、家を建てるならリビングの天井はレッドシダーの無垢板で仕上げたいとずっと憧れていたんです。けれども限られた予算の中で、内装材に無垢板を使うとコストが跳ね上がってしまうので悩んでいました。
そんな時に父が突き板を使用した内装建材「the wall」の存在を教えてくれて。すぐに横浜の朝日ウッドテックのショールームに出向いたら、ちょうどレッドシダーの「the wall」が壁と天井に貼られていたんです。展示を見た瞬間に「これだ!」と気持ちが決まって、橋本さんに「『the wall』を天井に張りたい」と伝えました。

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朝日ウッドテック:村田道彦氏

村田弊社は「Live Natural(ライブナチュラル)」を代表とするフローリング材のメーカーとして認知されていましたが、木材メーカーとしてもっと木の魅力を伝えたいという思いから、「日本の壁に、新しい選択を。」というコンセプトを掲げて、2年前に開発したのが木質系の壁・天井材シリーズ「the wall」です。
奥瀬様が横浜ショールームでご覧になられたのは、ちょうど製品を発表したばかりで私たちも「the wall」の魅力を伝えたいとつくりあげた展示だったので、それを気に入ってくださったというのは本当に嬉しい限りです。

―「the wall」を採用した決め手は何だったのでしょうか。

奥瀬突き板なので、無垢材よりもコストを抑えられるのが大きな魅力でした。それに無垢材の場合、天井に一枚一枚張らなければならないので、施工の手間が増えてしまいますが、「the wall」は、板状になっているので大工の手間が省けるという点もよかった。そしてなんといっても、木の色の出方と板の幅がランダムなデザインが面白くて、ちょっと変わっているところが気に入りましたね。

橋本この家が建つのは鎌倉市の風致地区であり、埋蔵文化財保護地区で建物の高さは最高8mまで、さらに第1種低層住宅のエリアで建ぺい率は40% / 80%という限られた条件の中で建てる必要がありました。元々広いリビングダイニングを要望されていたので、1階のリビングの天井高は最大限高い3150mとしました。奥瀬さんが選ばれたレッドシダーの「the wall」は個性的な木目だったので、もし天井高が低かったら空間に圧迫感があったかもしれません。

村田実はモニターに応募していただいた時に、天井だけでなく床から立ち上がるように壁面にも「the wall」を使用する提案書を見て「山小屋風になってしまうのではないか」と心配しました。個性的な木目のデザインが主張することに躊躇はなかったのでしょうか?

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橋本それはデザインをする上で最も配慮したポイントです。村田さんがおっしゃったように、レッドシダーの「the wall」は使い方次第で山小屋風に見えてしまう恐れがありました。天井高が高かったのは視覚的に山小屋風に見えない効果を生んでいます。
さらに床との色を合わせることと、「the wall」を囲む横の壁は白くシンプルにすることで、個性的な木目の天井と壁をアクセントして引き立たせてました。
そして、何より奥瀬さんの家具のチョイスが素晴らしくて、山小屋ではなくモダンな印象に傾いたのだと思います。

村田実際にこうして空間を体感すると山小屋どころかとてもモダンな空間に仕上がっていて感動しました。カーテンの色合いもとても素敵で、「the wall」にもぴったりですね。

奥瀬そう言っていただけるとうれしいです。カーテン選びは何社もショールームを巡って本当に苦労しましたから・・・。最後はカーテン屋さんにここに来てもらい「the wall」に吊りサンプルを合わせながら決めました。

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橋本そういえば当初は「the wall」は天井だけに貼る予定だったけれど、施工中のカーテン選びがきっかけで壁面にも「the wall」を使うことになったんですよね。

奥瀬そうでしたね。私はカーテンにグレーの生地を使いたいと考えていたのですが、白い壁から無地のグレーのカーテンが吊り下がるのはシンプルすぎて面白みがなかった。
そこで工事中に余っていた「the wall」を大工さんと一緒に壁に並べて検証したところ、壁にも「the wall」を立ち上げたら部屋も広く見えるし、無地のカーテンも引き立つのが分かって、工事の途中だったのですが、恐る恐る橋本さんに「『the wall』を壁に使いたい」と要望を伝えたんです。

橋本結果的に壁の一部に「the wall」を立ち上げたのは正解でした。他にも「玄関の天井の一部にも『the wall』を張りたい」というリクエストを頂いたのですが、玄関から「the wall」が繋がっているような視覚効果が得られて空間に広がりが生まれました。
奥瀬さんからアイデアを出していただけたので、かえって自分の色んな提案をしやすかったですね。

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―「the wall」を施工する上でのポイントを教えてください。

橋本とにかく丁寧に張ること、それに尽きます。今回は天井高が高かったことと面積も広かったので、現場に専用の足場を組んで2週間かけて「the wall」を張りました。
今回工務店の大工がとても丁寧に仕事をする方で、一枚一枚木目や色味を見ながら丁寧に施工してくれたおかげで美しく仕上げることができました。

村田「the wall」の施工のために足場を組んで丁寧に張ってくれたというのは、メーカーとして喜ばしい限りです。施工管理を現場に投げっぱなしにするとこんなに綺麗に張ってはくれません。継ぎ目が分かるぶつぎり状態で張られた「the wall」を見るとちょっと残念な気持ちになります。特にレッドシダーの「the wall」は色味を合わせながら張るのが難しいんです。
実は施工事例はたくさんあるのですが、ホームページやカタログなどでご紹介できる事例はとても少ない。ですから奥瀬邸のようにすーっと色味がつながって継ぎ目が分からない丁寧な仕事を見て、大工さんはきちんと設計者の意図を汲んで丁寧に仕事をされているのだなと感激しました。

橋本きちんと設計意図を伝えて施工してもらうのが私たち設計者の役目なんですよね。手間の掛かる施工は、現場サイドからしたら嫌がることが多いですが、良いものを造っていこう!と工務店さんや職人さんたちと共有していくことが大切です。

村田そして橋本さんの設計は「the wall」を使った壁や天井のエッジの処理がとても美しいと感じました。

橋本当初は幅の広い幅木をつける予定でしたが、せっかくの「the wall」の壁の魅力が半減してしまうと思い、ステンレス製のシャープな幅木をつけることで折り合いました。 また無垢板の場合は、断面をヤスリで削ればそのままでも問題ありませんが、「the wall」は断面のMDFが見えてしまうのでそれを目立たせない見切り材をつけたり、壁面と天井の収まりには透かし目地を入れて、なるべくディティールが美しくなるように工夫しました。
ここでも、手間の掛かる工事を工務店さんがしっかりやってくれたので、この納まりが実現できました。断面を隠せる見切り材もセットで販売してくれたらもっと使い勝手がよくなりそうですね。

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―実際に「the wall」を使ってみた感想をお聞かせください。

奥瀬家に遊びに来た友人たちは「カフェみたいで素敵!」「ここに住みたい」とみんな褒めてくれます。質感が木そのものなので、「無垢板を張ったの?」と聞かれることもあって、突き板だというと驚かれます。「the wall」を選んで本当に満足しています。

橋本「the wall」の存在は知っていて、「いつか使ってみたい」と思っていたのですが、実際に今回使う機会を得て、素晴らしい製品だと感じました。今回はレッドシダーを使用しましたが、その他12種類あるラインアップの中から別の素材も使ったデザインもしてみたいと思いました。

村田はい。レッドシダーの他にも、スプルース、サペリ、ヒノキ、ベイマツ、タモ、オーク、ヘムロック、ハードメープル、ブラックチェリー、ブラックウォルナット、スギがお選びいただけます。
壁面・天井の仕上げはクロス仕上げが主流ですが、奥瀬邸のように壁や天井に木を使うという選択肢があること、そして木に包まれた豊かな空間の魅力がもっと広く伝わっていけば嬉しいですね。


取材・文/梶原 博子
撮影/大倉 英揮

朝日ウッドテック東京ショールーム

館内ショールーム

無垢材を贅沢に使用した銘木の美しさと、床暖房対応、耐久性などの機能性を併せ持つLive Naturalシリーズの フローリングを中心に、素材・ディティール・色調などを実際に触れて感じていただけるよう広い面積で展示しています。実際に靴を脱いで床に上がって仕上がりを素足で体感したり、樹種の魅力をご堪能いただけます。