ハイクオリティなマンションリノベーションに特化した建築設計事務所として注目を集めている「カガミ建築計画」。その代表である各務謙司氏が、OZONE 7Fのショールーム「ハーフェレ ジャパン新宿ショールーム」を訪問しました。ドイツをはじめ、ヨーロッパの家具建具用の金具、収納パーツ等をご紹介しているハーフェレ製品の高品質・高機能に惚れ込み、以前から自身の手掛ける物件で幾度も採用しているという各務氏に、ショールームスタッフの佐野さん、大木さんにお話を伺いながら、最新のハーフェレ製品をご覧いただきました。
※「ハーフェレ ジャパン」の詳細は、下記をご覧ください。
操作性・機能性の体感を重視したショールーム ハーフェレジャパン新宿ショールーム
左から佐野氏(ハーフェレ)、各務氏(カガミ建築設計)、大木氏(ハーフェレ)
各務氏とハーフェレ商品の縁とは…
各務 マンションリノベに専念する前の若手時代は、実績がなかなか積めず、スタッフを雇う余力もありませんでした。そんな頃、とある金具メーカーにカタログが欲しいと連絡したら、こちらの設計実績が少ないのを調べられたのか、送ってもらえなかったんです。でも、ハーフェレさんはすぐに送ってくれたんです。嬉しかったですね。暇でしたので、日がなカタログを眺めておりましたが、どの製品もデザイン性が高く、いつか使ってみたいと思うようなものばかりでした。
当時はキッチンも造作で作っていたので、扉のヒンジや取っ手、引き出し金具もすべて自分で調べて指定していました。大変な手間でしたが、それをどう使えば安く美しく仕上がるか徹底的に考え抜いたおかげで、ずいぶん設計力が付きました。ハーフェレさんの製品とはそんな頃からのお付き合いです。
大木 2008年にオープンした新宿ショールームにも、初期の頃から通っていただいています。ハーフェレの製品の中で特に思い入れがある製品はどれになりますか?
各務 例えば、キッチンのキャビネットに使うこのトールユニットシステム「DISPENSA」。背の高い引き出し式の食材ストッカーですが、私はいつも、このストッカーと冷蔵庫をセットで使うレイアウトをお客様に勧めています。買い物袋を一か所にドンと置いて、冷やす必要のある生鮮食品は冷蔵庫に、それ以外は隣のストッカーにすぐ収納できるので、必要以上に何か所も移動しなくいい。耐荷重も棚一段分で18kgあるので、2Lのペットボトルのストックを6本並べて入れても大丈夫。しかも、縦長の引き出し式なので、引き出して横から眺めれば中にあるものが一覧できます。
実際に「DISPENSA」を開け閉めしながら使い勝手の良さを説明する各務氏。
各務 実はこれ、実家のリノベーションの際に、初めて採用しました。実家のリノベーションは、私が試してみたかった家具や設備、器具をたくさん入れて、実験場のように使ってしまったので、母親からはとても評判が悪くて。でも、このストッカーだけは手放しで褒めてくれます(笑)。私からもあらためて強くお勧めしたい製品です。
佐野 あまり料理をされない建築家/設計士の方などはキッチンのディテールにそこまでこだわりがなく、設計や家具選びなどは割とお任せで進んでしまうこともあるようです。でも、各務さんはご自身でも本格的なお料理をされる方なので、キッチンまわりの使い勝手に関しては、本当に理解が深く、提案にも説得力があります。
各務 実家を実験場のようにした結果、何か使い勝手に問題があれば、すぐに母親から電話がかかってきます(笑)。ハーフェレさんの製品は、そうやって自分の周りの人やお客様が長年使っているため、私の中に評価の蓄積があるんです。こういうところが評判がいい、でも使い方にこういう課題があるから気を付けて……。というふうに説明すると、「100%絶対お勧めです!」とむやみに推すよりも、新しいお客様もよほど納得してくれます。
ハーフェレならではの「見せない美学」
各務 新宿ショールームの事務室の扉に使われている、フリッツユルゲンズの「ピボットヒンジ・システム」のドアも注目の製品です。これはいわゆる「フロアヒンジ」の一種で、扉の上下に軸を通し、上のドア枠と床面でそれを受けて扉をスムーズに開閉するタイプのドアヒンジです。これまでのほとんどのフロアヒンジは、開閉をサポートする箱型のバネユニットを工事のかなり早い段階で床下に埋め込む必要があり、二重床にするなど床下にスペースを作らないと設置が難しいんですが、この製品は扉板の中にバネユニットやクローザーのシステムが内蔵されるので、床・天井への埋め込みの必要がなく、ヒンジ自体もとても小さいので、ほとんど目立たないのです。ドアまわりをスッキリさせたい、扉の下に段差を作りたくないなどの場合に最適です。そしてとにかく施工が楽!これまでのフロアヒンジの問題点を一気に解決するような、素晴らしい製品です。私たちのカガミ建築計画はまもなく移転するんですが、その新しい事務所でも、これを使わせていただきました。
トールユニットシステム「DISPENSA」の紹介動画
各務 この「ピボットヒンジ・システム」のように、ハーフェレ製品には共通して「見せない美学」があるような気がします。本当は優れた発明品なのに、その存在感は限りなくゼロにすることが美しい、というような。逆に言えば、なかなか気づかれにくいし、その効果や意義が実感しにくいのが難点でもありますね。そのためにも、ショールームを訪れて実物に触れることが大切だと感じています。
それから、同じ「見せない美学」という点では、この収納のキャビネットも、ヒンジの機構が外からではまったく見えませんね。
大木 これは、キャビネット用アルミフレームガラス扉として商品にしていますが、「Airヒンジ」と呼ばれる薄型のヒンジ/隠し丁番を使っています。これも側板ではなく、天板と底板に埋め込んで取り付けているタイプなので、閉まっている状態ではまったくヒンジが見えません。
各務 側板にヒンジがないということは、棚板やそのためのダボ穴なども位置が一切制限されることなく、自由に配置できるということなんです。上下二点で支えているだけなのに、とても重いはずの大判のガラス扉も空気のように軽く開閉できる。だから、「Airヒンジ」。
各務 これはまだショップやオフィス、ホテルなどでの使用が多いとは思いますが、私はマンションリノベでもどんどん使っていきたいですね。それからもう一つ。側板にヒンジがないということは、この展示キャビネットのようにLEDのライン照明も縦に真っ直ぐ、ピーっと美しく配置できるんですよ。
「金具」の枠を超えるハーフェレの挑戦 ~ LEDテープライト
各務 今、ハーフェレさんはLEDのライン照明がすごいんです。細いライン状になっていて、自由に曲げることができて、しかも発光素子の光点の粒が目立ちにくく、一本の綺麗な光の線になる。これまでのLEDライン照明とはかなり印象が違う商品だと思います。
佐野 最近の家具用/間接照明用としての注目商品は、最新のLED照明技術を駆使したLEDの素子が見えないCOBテープライトです。光源が細く小さいので、壁面や天井だけでなく、先ほどのキャビネットのような大型家具はもちろん、引き出しの内部照明など、家具の内側に設置できる新世代の照明器具としてお勧めです。実際、お問い合わせの件数も増えています。
各務 ここ数年で確実にLEDライン照明の技術が進みました。部屋の間接照明に使うタイプは他社からも豊富に出ていますが、キッチンまわりや造作家具の内部に仕込むような用途だと、私はこの「LOOX」のものを採用することが多いです。家具・建具用金物や収納パーツを開発しているハーフェレの照明器具ということで、家具との相性が良いのが、照明メーカーのほかの製品と大きく異なるところです。
大木 家具と組み合わせて使うときの使い勝手を最優先に品揃えをしています。すべて家庭用コンセントからの電源供給にして電気工事を不要にしてあるのも、小型の電子トランス一つで全体を制御できるシステムにしてあるのも、家具との組み合わせの中でこの光源を活かしていただくためのものです。
欧州のインテリア市場で磨かれたハーフェレの技術とデザイン
各務 欧州の見本市に出てきた最新の高級家具などで、新しい発想の商品を発見すると、「これが日本に入ってくるのは、ずいぶん先になるんだろうな……」といつも考えます。でも、何ケ月か後には、それを実現するための製品をハーフェレ ジャパンさんがいち早く発売してくれます。
大木 そこは私たちの大きな強みです。ヨーロッパのインテリアトレンドをいち早く日本に紹介するだけではなく実際に導入していくための手助けをする……。ドイツに本社を持つ企業として、それは常に意識していることです。
佐野 ただ、私たち金具メーカーの発想だけで何か新商品を作っても、それが本当に必要とされるものなのかは分からないわけです。ですので、各務さんのような建築家や家具屋さんとの対話の中で、どんなインテリアを実現したいか、そのためには何が必要なのかを常に探っていく必要があります。このショールームは、ただハーフェレの製品を実際にお試しいただくためだけではなくて、そうした方たちとの対話の場にしていきたいというのが本音です。
各務 私にとっては、やはり「困った時のハーフェレさん」です。なかなか良い資材、良いアイデアが見つからない時に、ハーフェレのカタログやホームページをパラパラと見ていると、「あっ、もしかしたら、これがこう使えるかもしれない!」という閃きがあります。それは、メーカー側が「こう使ってほしい」という使い方だけではなくて、「こんな使い方をしてみたら、どうなるだろうか?」というような意外な発想を呼び起こす、「余白」がハーフェレの製品にはあるということだと思います。
既製品として出来上がったものではない、未完成の部品の状態のものがカタログにズラリと並んでいるのも特徴的です。そこからすごい可能性を持って発想が広がっていきます。それをどういうふうに使うのかは建築家の腕の見せ所です。そういう自由で新しい発想こそが、お客様に喜んでいただける設計につながるんじゃないかと、私は思っています。
建築家 各務 謙司(かがみけんじ)(カガミ建築計画)
1966年東京都生まれ。1992年早稲田大学卒業。卒業後、米国の大学院に留学し、ニューヨークの設計事務所で2年間従事。その後日本に戻り、1996年より個人設計事務所設立、現在に至る。
公式HP:カガミ建築計画
Instagram:@kagami_archi
ブログ:建築家が考えるプレミアムリフォーム・リノベーション
※2025年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。