日本初の体験ギフト事業を開拓してきたソウ・エクスペリエンスは、社員の子連れ出勤や週4日勤務を認め、多様な働き方を推進する企業としても注目を集めてきました。代表取締役の西村 琢さんも3人の子どもを育てながら、リモートワーク、子連れ出社などを実践。その経験をふまえ、起業家目線、生活者目線で「ワークスタイルとこれからの住まい」について語っていただきました。
多様な働き方ができれば、社員は離れない
ー まず御社の概要についてお聞かせください。
弊社は様々な体験をギフトチケットという形で流通させている企業です。提携している施設は全国に約2,000カ所あり、2005年の創業から現在までで体験を贈られた利用者は累計120~130万人になります。
現在の従業員数は約90人です。正社員・アルバイトという区別はあまり意識していなくて、全員直接雇用しています。
ー 子連れ出社など多様な働き方を認めている背景とは?
「保育園に子どもを預けられなかった」という理由で女性社員がどんどん退職するのは困るので、本人が働きたいなら「子どもを連れてきていいよ」となったのが子連れ出社の始まりです。最初は親も周囲も緊張したけれど、そのうち慣れました。結局は慣れの問題です。
もちろん子連れ出社で100%のパフォーマンスはできない。でも、辞められるより6~7割でもやってくれたほうが助かるし、新しい人を見つけてトレーニングする時間などを総合的に考えると子連れ出社のほうが有利です。
今は僕も含め、たまに子連れで来る人が数名いる程度ですが、「今日は子どもを連れて来た」と言われれば受け入れるのが当たり前になっています。
副業も、業務をきちんとこなしてくれるのであれば、本人の人生なので好きにやればいいと思います。リモートワークに関しても具体的な決め事はないです。社員みんなが集まるのは年に4回の振り返りミーティングのときくらい。でも、そのときもオンラインの人はいます。
そういう感じでやってきた結果、スタッフがあまり辞めないです。離職者ゼロではないけど、かなり低い。全員が「会社大好き」というわけでもないと思いますが、やはり会社は、スタッフがすぐに辞めてしまう会社よりも、定着して長期間働いている会社の方が強いと思いますし、そのためには社員と会社の関わり方を多様化していくことが大切だと思います。
心地よく過ごせる場所なら働きやすい
ー オフィスに求めることは?
オフィスは「働く場所」である以前に「生活する場所」ですよね。人が時間を過ごすわけですから、心地よく過ごせる場所であることが働きやすさになると思います。
今のオフィスは不動産業者さんに紹介してもらったのですが、見学したときはレトロな昭和風のオフィス用の机と椅子と棚が並んでいるような場所でした。それを知り合いの建築家・山路哲生さんに頼んで、床も天井もまるごと全部変えてもらいました。
ミーティングしたりランチしたりできるフリーなスペースと、デスクのある執務スペースがあって、その間にちょっと横になったりできる場所があります。窓があるともっといいですが、地下は賃料が安いので。前のオフィスも地下でした。
親子時間をおおらかに楽しめる環境を求めて
ー ご自宅についてお聞かせください。二人目のお子さんが生まれて世田谷から神奈川に移られたそうですが?
身近に山とか海が欲しくなったんですよね。前に住んでいたのは世田谷のほうでした。わりといい環境で近くに大きな公園もあったけれど、公園はやっぱり公園。いろんな生き物やその死骸、植物をあちこちで見つけることができ、四季折々の香りがする海や浜、山とは違います。
また、長男が通っていた園はとても評判は良かったのですが、我が家には違う環境のほうがもっとフィットするのでは、と感じて葉山に移り、長男が小学校に上がるタイミングで、次男の保育園の都合で逗子に引っ越しました。その後、大家さんの事情もあって逗子で築15年くらいの木造二階建ての家を買い、今はそこに住んでいます。
住まい選びで重視したのは保育園に子どもを預けられること、海まで歩いて5分以内であること、そして通勤です。今は平均すると出社は週3.5ぐらいですが、逗子は電車も多いしグリーン車もあるので、通勤がストレスになりません。
環境の心地よさは世田谷のときとは全然違います。保育園の細かいルールは同じかもしれないけれど、まち全体で眺めるとだいぶ違う。とくに逗子はほどよい規模感がいいですね。人口5万人で、人の集積する場所もほどよく限られ、知り合いに会う頻度もほどよい感じです。町内行事も強制ではなく「参加したい人はどうぞ」くらいの緩さがあります。
海が近くにあるので、やっぱり海で遊ぶことは多いです。子どもと一緒に釣りに行ったりもします。釣れた魚をさばいたりするのは、ほぼ次男の役割です。
次男は妻と一緒に料理を作ったりもしますが、妻がキッチンを子どもにも使いやすいように最適化している、ということはありません。