建築家とつくる、家族との暮らしの中で
快適に仕事ができるワークスペース

リモートワークもすっかり定着し、住まいの中のワークスペースの在り方も変化してきました。
これから家を建てる方やリフォームをお考えの方はもちろん、コロナ禍に急ごしらえで仕事場をつくった方も、改めて自分らしいワークスペースをきちんと整えませんか?
今回は、「fantastic design 一級建築士事務所」代表 赤松純子さんに、家族と共に暮らす住まいの中で、自分にも家族にも快適なワークスペースのつくり方をお聞きしました。

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― 誰が、いつ、どう使う?働き方から考える

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設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・株式会社明和工務店
(Photo:加納準/加納フォト)

今、家づくりのオーダーをいただく際に、ワークスペースを設けたいというご要望はとても多いです。
以前は、奥さまの家事スペースやお子さまの勉強スペース、たまにご主人の書斎をつくりたい、というご要望はありましたが、コロナ禍を経てハッキリと状況が変わりました。

住まいの中にワークスペースをつくる場合、そもそもなぜ必要なのかを考えることが大切です。
ダイニングテーブルや作業台があれば事足りるはずですが、あえてつくりたい理由は何なのか。
ひとつは、ワークスペースが独立していないと、作業が中断してしまうから。
例えばダイニングテーブルで仕事をすると、食事時には片づける必要があります。
共有の場所と切り離して、仕事、趣味、宿題に集中できるスペースが別にあると便利ですよね。収納なども備えた専用のスペースがあれば散らかりにくいですし、オンとオフの切り替えもしやすくなります。

次に、「誰が、いつ、どのように使うのか?」をクリアにすること。
お客様の方でもまとまっていないことが多いので、丁寧にヒアリングしていきます。
主に使うのはご主人なのか奥さまなのか、家事と並行して行うのかどうか、お子さまや家族と共有するのか、など。
完全に1人でこもりたいという方もいますし、せっかく家で仕事をするのだから、集中しながらも家族とつながっていたいという方もいます。

そうした自分らしい働き方を明確にしていくと、住まいの中のワークスペースは大きく3つのタイプに分けられます。
完全にこもりたい方には「個室タイプ」、集中したいけれど、ちょっと顔を上げれば家族とつながるような「見え隠れタイプ」、そしてつねに家族や周りの気配を感じられる「完全オープンタイプ」。
ご自身の働き方と暮らし方、家族との関係性などはさまざまですし、もちろん物理的にスペースが限られる場合もあります。

― タイプによって変わる、ワークスペースにおすすめの場所

ワークスペースをつくる場所は、どこからアクセスして、どの部屋とつながるかがポイント。
「個室タイプ」の場合は、主寝室につながるつくりであれば完全に隠れ家のようになりますが、意外とそうしたご要望は少なく、リビングに隣接してつくる方が多いですね。家族や子どもも入りやすく、誰か1人専用ではなく全員が使える共有スペースという考え方です。
また、数年前からトレンドになっている「ヌック」をつくりたいというご要望も増えています。「ヌック」とは、北欧の住まいに見られる、家の中の小さな居心地のよい空間のこと。1畳程度の小さな書斎をつくって、入口を小さくアーチ状にし、光と音を遮断することで素敵なワークスペースになります。

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キッチン横(リビング背面)に設置した「個室タイプ」のワークスペース。
設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・有限会社一貴工務店

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「見え隠れタイプ」は、LDKの片隅を間仕切ったり、吹き抜けのまわりにつくったりと、連続した空間内につくるのがおすすめ。仕事に集中する時は周りを遮断して、ちょっと視線を変えたり、立ち上がることで家族の気配を感じられるような工夫が必要です。
リビングと同じフロアにつくる場合は、テレビの背面を壁として活用したり、リビングとの間に収納棚を立てたり、仕切りに高さを出すことで目線を遮ります。
リビングとワークスペースのレベルを変えて、踊り場や2Fの吹抜けの周りにスペースをつくって、時々リビングを見下ろせるようにしてもいいですね。

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スキップフロアに設置した「見え隠れタイプ」のワークスペース。
設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・第一住宅

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「オープンタイプ」は、キッチンやダイニング、またはスキップフロアや、LDKを見下ろせる吹抜けまわりにつくることが多いですね。
キッチンの背面や、収納の隣、キッチンカウンターからそのままつなげてもいいと思います。
キッチンやダイニングのオープンスペースは、料理や食事をして、すぐに仕事できるのがメリット。
一方、リビングにオープンタイプでつくってしまうと、テレビの音の干渉なども気になるため、事例としては少ないです。

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キッチン、ダイニングに設置した「オープンタイプ」のワークスペース。
設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・有限会社一貴工務店

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設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・株式会社バウハウスデザイン

― 快適に過ごせて、集中力が続く、レイアウトの工夫

ワークスペースの設計で私が心がけていることは、目線を上げた先に窓があるしつらえにすること。
人の集中力はそう長く続かないので、立ち上がることなく、仕事中ふと目を上げて外の景色が目に入ることでリフレッシュできますよね。
また自然光が入ると、時間の流れや天気が分かり、自然と共に心地よく過ごすことができます。
外に向いていなくても、内窓をつくり、LDK越しに光を取り入れる方法もあります。
ワークスペースはLDKよりも優先度は低くなるので、理想通りにならないこともありますが、できるだけ閉鎖的になりすぎないつくりを意識しています。

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個室タイプでも目線の上に窓を設けることで、開放的な空間に。
設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所

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設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・MITAS COMPANY 株式会社

広さは、廊下の幅と同じ1畳ほどからつくれますが、やはり狭さは感じるので、窓をつくるなどして視線を外に伸ばす空間づくりを工夫する必要があります。
また、収納するファイルや本の多さによって、必要な収納棚のサイズは千差万別ですし、web会議のために背景や音を気にされる方もいらっしゃいますね。
そのため設計前のヒアリングで、職種や実際の作業の内容についてもお聞きするようにしています。

― 狭い敷地でも、工夫によって、家族も自分も心地よく

ご家族と一緒に過ごす空間で、家族がくつろぐスペースとワークスペースを共存させるためには、視線・光・音をどうするか配慮が必要です。また、どこからアクセスするか、動線も重要です。
集中力を高めるためになるべく視線を交わさないのであれば、例えばリビングの隅や壁側にデスクを配置します。
光や音に関しては、パーテーションやロールスクリーンを設置することで、存在を感じながらお互いにとって邪魔にならない快適な空間をつくることができます。

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リビングの左手奥に配置したワークスペース。
設計:赤松純子/fantastic design 一級建築士事務所・株式会社ハウスプラン

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かつては、ワークスペース=お父さんの書斎という考え方でしたが、今では働き方や家族の役割も多様化しています。テレワークも、働き方の1パターンとして普通になりました。
共働きのご家庭も多く、住まいづくりの上でも、ご夫婦で協力して家事をうまくまわせるかどうかを重視する傾向があります。
家族の過ごし方や、それぞれの役割、性格、仕事の内容などから、自分たち家族にとっての快適なワークスペースを考えて、実現していただきたいなと思います。

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赤松 純子(Junko Akamatsu)

建築家・インテリアデザイナー。
横浜国立大学・大学院建設学科卒業。
伊東豊雄建築設計事務所などを経て、2001年「ファンタスティック デザイン 一級建築士事務所」設立。
2006~2021年武蔵野大学にて非常勤講師を務め、2013年よりOZONEでは提携インテリアデザイナーとして活躍。
建築家の視点から、マンションや戸建ての内装選定からインテリアコーディネートまで、空間のトータルデザインを得意としている。

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※2024年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

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