2020年から、設計・施工のプロフェッショナルを対象に、館内ショールームの製品をお試しいただく 『モニター企画』を実施し、多くの設計者にエントリーいただきました。ここでは、採用された施工事例を数回に分けてご紹介します。
2021年度の『モニター募集』詳細はこちらからご覧ください。 >


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瀬尾製作所の鎖樋「玉」を採用した住宅が、2021年春に埼玉県所沢市に完成した。この家を設計した新田浩司さん(Den設計室)と施主のKさんに、この家と鎖樋の魅力について語ってもらった。

――家づくりのきっかけを教えてください。

新田 施主のKさんとは、私が普段施工をお願いしている井上建築工業からの紹介で出会いました。Kさんは家づくりに対して「自然エネルギーを利用した家」という明確なテーマをお持ちで、さらに家づくりに対するご希望、新居でも使えそうな既存家具の寸法を書いた資料を事前にご用意されていて、家づくりに対する熱意をものすごく感じたのを覚えています。

Kさん 私と妻、小学生の娘と未就学児の息子の4人で暮らす家を建てたいと考えた時に、妻と話し合って、自分たちが大切にしたい思いをノートに書き綴りました。特に優先順位が高い希望が「自然エネルギーを利用した体にやさしい家」「夏は涼しく冬は暖かい家であること」「庭で家庭菜園をしたい。収穫した野菜を陰干しするスペース、干し柿を吊るせる軒下がほしい」「災害時に備えた備蓄スペースがほしい」という4つでした。

新田 初めてKさんご家族にお会いした時に、自分と相通ずるものを感じました。私は建築設計の仕事の傍ら、「おちばプロジェクト」という活動を行っています。日本の山は私たちの生活を支える大切な循環資源です。山が健康だと、豊富なミネラルが川へ、海へと流れ、生態系を育み、豊かな海産物を育てます。けれども、近年、林業の衰退は山だけでなく、他の環境や生態系を狂わす深刻な問題となっています。こうした状況を建築士としてなんとかしたいという思いから、家づくりをしたい人に国産材に目を向けてもらうことから始めたいと考えました。その第一歩として、農作物をつくり、焼酎や和紙などの産物をつくり、稲わらで正月飾りをつくるイベントを開催してきました。まずこうした自分の自己紹介をお話させていただいたのですが、K様ご夫妻は自然志向でもあったので、自分のこうした活動を知ってもらったことは、家づくりを進めていく上で意思疎通も図れたのでとてもよかったですね。

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左:埼玉県の県産材ときがわ材で立てた住宅は、木の下から見上げた景色をイメージしてデザインしている。
右:リビングの前には、施主が夢だった家庭菜園が広がる。

――どんな家をご提案したのでしょうか。

新田 Kさんの家づくりノートを元に考えたのが「森の中に寝転がっているような気持ちのいい家=梢」というコンセプトでした。木の下に寝転がった時に、枝先から木漏れ日が落ち、上を見上げた時に木がいっぱい見える、そんな光景を地元の県産材を使って表現するプランを考えました。1階は玄関、土間、リビングとダイニングとキッチンがひとつながりの広い空間になっていて、リビングの窓を開け放つと家庭菜園越しに、市街化調整区域の緑豊かな田園風景が目の前に広がります。開口部の幅に合わせた縁側は、庇を深くとっているので雨の日でも外に出られますし、Kさんがご希望された野菜の陰干しや干し柿も出来るスペースとなっています。庇が深い1階の採光を補うために、リビングの真上は吹き抜けとし、2階の窓から1階へ自然光を取り入れています。

Kさん リビングの窓は壁に引き込めば、外部と一体になったような開放感が得られます。庇が深いので、日差しが強い日でも日陰が出来るので、快適ですね。

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左:アプローチから目に付く東側に設置した鎖樋「玉」。水鉢を中心に植木や石を使い意匠的に仕上げてフォーカルポイントに。
右:「玉」は曲線のデザインが美しく、やさしい雰囲気の木造住宅によく似合う。

――瀬尾製作所の鎖樋は、従来の雨樋と一線を課す、モダンで洗練されたデザインが特徴です。今回のモニター企画では、いくつかのデザインから選べたのですが、その中から「玉」を選んだ理由をお聞かせください。

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設計者の新田浩司さん。

新田 デザインは、私が選ばせていただきました。建築に溶け込むように、丸く曲線が柔らかい形の「玉」というデザインの黒をチョイスしました。他に大きいサイズの「玉L」、色は他にシルバーもあったのですが、家とのバランスも考えて小さいサイズで、シルバーよりも存在が主張しすぎない黒を選んだのですが、Kさんも同じご意見でした。私は、雨も大切な風景のひとつだと思っていて、鎖樋を流れる雨水は雨の強弱によっても変わる。小雨がぽつんぽつんと降っている時は、雨粒が鎖樋を点のように伝わり、大雨だと線のようになる。それをみているだけでも楽しくて、リズムを刻むのも鎖樋の魅力のひとつだと思います。

――実施設計や施工で工夫したことや苦労したことはありますか?

新田 鎖樋はアクセントになるものですよね。今回は目に付くところに使いたかったので、アプローチに面した東側の庇の端に配置しました。あまりにも目線に近いところだと飽きが来てしまうので、目には入っているけれど、意識の中で溶け込む絶妙な距離感を意識して設置場所を決めました。

Kさん 鎖樋の場所は新田さんが決めてくれたのですが、設置は外構工事と造園を手がけてくれた知人にやってもらいました。鎖樋は玄関アプローチの前で人目につくこと、鎖樋の下は、実家で使っていた水鉢で受けたいと考えていたので、知人に意匠的につくりこんでもらいました。花が咲いていない時にも華やかに見えるように、石を立てているのがポイントです。水鉢に溜まった雨水は家庭菜園の水やりにも使いたいと思っていたので、鎖樋の位置はちょうどよかったですね。

新田 今回は、竣工後の造園工事の際に設置することが決まっていたので長めに発注し、造園工事の際に専用の錘とつないで、ピンと鎖樋がまっすぐになるように現場カットしてもらいました。上部も引っ掛けているだけなので、施工は非常に簡単です。

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左:瀬尾製作所のオリジナル鎖樋「玉(黒)」。専用の錘につないで水鉢に沈めて固定。
右:庇の雨樋へは専用の部材で鎖樋を固定。

――実際に鎖樋「玉」を使った感想をお聞かせください。

新田 普段から、庇を深く取る住宅を設計することが多く、雨樋はなるべく丸パイプではなく、鎖樋を使いたいという思いがありました。けれども鎖樋は、設計者側から近づけない製品のひとつで、これまでは工務店に「鎖樋を使いたい」と言って提案してもらうほかありませんでした。雨樋で検索してみても、建材メーカーのカタログに埋もれているので、どんなメーカーがつくっているのかという情報にたどり着けなかったんです。今回、瀬尾製作所の鎖樋を知る機会を得て、設計者としても選択肢の幅が広がりうれかったですね。

Kさん 雨って霧雨や小雨だと家の中にいてもわからない時がありますよね。けれどもこの家に住み始めて3ヶ月が経ち、雨の日は、雨樋からツーッといい音がして、見ると雨粒が見えて雨が降っていることがわかるんです。その光景がとてもいいなと感じます。

新田 私は「“樋”が“問い”だったら面白いな」と思うんです。今のようにKさんご夫妻が「雨樋から音がするから雨が降っているね」と会話していたとします。するとこの家で育つ子ども達から「どうして雨が降ると音がするの」「雨の勢いで雨粒の形が変わるのはなぜ」といったように鎖樋からいろんなクエスチョンが生まれて、そこから学びや親子のコミュニケーションが育まれていく。この家からそんな未来が紡ぎだされていく光景が目に浮かびます。そんな素敵な問いが生まれる住宅をこれからもつくっていきたいですね。


取材・文/梶原 博子
撮影/大倉 英揮

瀬尾製作所展示室 SEO TOKYO SHOWROOM

館内ショールーム

地場産業として400年前から 金属加工が根付く冨山県高岡市において、1935年の創業から金属を使った様々な製品を作っています。ショールームでは、現代のライフスタイルに合わせた仏異【Sotto】と、現代の建築に合わせた雨樋・鎖鎖【SEO RAIN CHAIN] の2つのブランドを紹介しています。