イベント・セミナーレビュー

小泉誠と仲間たちが考える「郊外のすゝめ」シンポジウム
郊外の未来を考える
住みたい・働きたい街は自分で作ろう!

郊外のすゝめ シンポジウム 郊外のすゝめ シンポジウム
3月16日(木)~3月28日(火)に展覧会「小泉誠と仲間たちが考える 郊外のすゝめ」がリビングデザインセンターOZONEにて開催された。本展では、「郊外で住みながら働く」をテーマに、郊外ならではのライフスタイルを提案。「郊外」にスポットを当て、都市通勤のためだけの住宅地ではない、郊外での新たな暮らし方の可能性に触れ、これからの住宅像を見直すための提案が新宿パークタワー1F アトリウムで披露された。「団地で週末起業するシングルマザー」「自宅の一部を開放してカフェを営む夫婦」「実家の敷地内に建てた庵を仕事の拠点に週末は街に開いて商いを行うクリエイター」という3組の住人をフューチャーして、それぞれのスタイルで住み、働くリアルな暮らしの様子を1分の1のモデルで紹介。連動企画として、マルシェや地域工務店による地域活動の見学会を開催し、郊外ライフとそれを実践する人たちとのふれあいの場も用意し、大いに賑わいを見せた。
3月20日(月・祝)には、東京の郊外・多摩地域を拠点とするデザイナー、カフェオーナー、創業支援を行う企業の代表、都市研究者、地域工務店代表によるシンポジウムが3Fパークタワーホールで開催され、3連休の祝日ながら約150人の聴講希望者が集まり、熱心に耳を傾けていた。

取材・文/阿部博子
撮影/大倉英揮

第1部 プレゼンテーション

トップバッターとして登壇したのは、都心から西に約30km離れた国立市を拠点に活動するデザイナーの小泉 誠氏だ。文京区本郷で生まれ、その後も目黒区や大田区など都心で暮らしていたという町の遍歴に触れ、30年前に国立の公団住宅へ移り住み、その後、仕事場を国立のアパートに構えたのが、初めての「郊外」体験だと話した。そうして国立に根を下ろして自宅をリノベーションし、国立に移り住んだ両親の家を設計、自身がデザインした家具や道具を売る店「こいずみ道具店」を開店する。過去を振り返り、都市部に活動拠点を置いて最新のトレンドや情報を追う生活よりも、多くの情報が入ってこない郊外という場所に身を置いたことが自身の個性を磨く結果となり、デザイン活動に没頭できた理由ではないかと話す。また、約5年前から地域工務店の相羽建設と進めている地域のコミュニティーの場として開放する「つむじ」での施設やイベントなどを紹介し、住まいの一部や駐車場、庭などで活用する6畳ほどの「舎庫」で店を開く提案など、地域とつながる「住み開き」の提案を行った。
2番目にプレゼンテーションしたのは、「住み開き」を実践する小池ともこ氏。東京の郊外である東村山に生まれ育った小池氏は、通勤に便利な駅近なマンションに移り住んで暮らしていたが、一人暮らしをしていた親と一緒に暮らすことをきっかけに実家をリフォームして、住居の一角に蕎麦粉と蕎麦の実を使ったお菓子を販売する「そばの実カフェsora」をオープンした。住み開きをしてよかったことは、一度離れてしまった地域とつながることができたことだと語る。関係が途絶えていた同級生やその親がカフェに来て、つながることができたという。拠点が出来たことで顧客との繋がりも深まった。「イベント開催時に現地で販売だけを行っていた時は、『どこに行けば買えるの?』と聞かれても販売先を案内できなかったのですが、店ができたことでそこから先の縁が出来るようになりました」と小池氏。店は東村山の中でも不便な場所にあるが、遠くは京都、北海道から来てくれる顧客もいるといい、このエピソードからも人は価値を感じられれば不便な場所でもやってくることを証明している。最近では、ブログなどで小池氏の活動を知り、「蕎麦粉を使って村起こしをしたい。そのためのアドバイスが欲しい」と行政や他の地域からの問い合わせも増えているという。やりたいことがぶれなかったことで仕事につながっていると感じており、自分のやりたいことを発信し続け、マイペースに進んでいくことが現在につながっているといい、場所は関係ないと確信しているそうだ。今後は、カフェを近所の人が気軽に集まれる場所にすること、そして地域ごとに伝わる蕎麦文化を学び、新しい光を当てて蕎麦の魅力を発信していきたいと語り、プレゼンテーションを終えた。
次に登壇したのは、中央線の西側を主な活動拠点として東小金井事業創造センター「KO-TO(コート)」など、7カ所の拠点を運営するタウンキッチン代表の北池智一郎氏。「現在は働き方が選択できる時代」であり郊外にはそうした様々な働き方を受容できる場であると話し、自身が関わる創業支援施設でのケースモデルを中心にプレゼンテーションを行った。飲食に特化したシェアキッチンでは、曜日や時間を分けてキッチンをシェアすることなどにより、食ビジネス開業をサポートする。そこで週3~4日、手作りでベーグル作りを行う女性は、手間暇をかけて丁寧に作るベーグルの味が評判を呼び、少し高価だが販売日を目指して客が押し寄せ、人気を博しているという。その他、夫と自分の親の介護体験から介護する側の家族や本人のケアなどを記した介護ハンドブックを作り、現在はNPOを設立して介護のアドバイスを行う女性や、自宅を民泊先として開放してインバウンド支援を行う男性など「郊外で働く」人々の活動を紹介することで、郊外には様々な働き方があり、それを自由に選択できる時代に入っていると語った。「これまで、『ベッドタウン』と自虐気味に語られていた郊外は、果たして住むだけの場所なのか。今、自ら「郊外」を働く場所として選ぶ人たちがその古い価値観を塗り替えている」という言葉には説得力があり、多くの来場者が熱心にプレゼンテーションを聞き入っていた。
最後を締めくくったのは、法政大学で都市学を教え、全国の自治体や民間企業と連携したまちづくりを行う保井美樹氏。「脱・郊外計画論=~暮らしたい形を実現できる場所へ」と題したプレゼンテーションは、まず「内郊外」「外郊外」「超郊外」という郊外の定義の解説からスタート。イギリスの郊外、レッチワースでのまちづくりを例に、「都市に打ち勝つくらいの魅力ある田園都市にしないと人が来ない。街が街として老いていかない。公園や林地などのパブリックゾーンを魅力的な場所にしていくことが、鍵になる」という考えを話した。日本では電鉄系の不動産事業者による沿線開発が進み、戦後の住宅不足を背景とした行政主導のニュータウン開発、地主層による比較的小規模な開発や借地借家開発により郊外が形成されてきた歴史がある。「欧米に比して、日本の郊外は企業の沿線開発や行政のニュータウン建設に依存し、自律的コミュニティが発展しなかった。一人一人が主体的に関わっていかないとできない。しかし、今『住み開き』をする次の世代が現れたことで、例えば子育て中の若いママが集まってマルシェや手作り市を主催するなど、新しいコミュニティが生まれつつある。大切なのは、『昨日と同じように今日を管理していくこと』。これからが郊外の正念場である」と語ると、会場から大きな拍手が送られた。

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