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2020年2/14(金)クローズ

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東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー内
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島崎信コラム「実にいい、暮らしの道具 」vol.9 フィン・ユールの家具

Column

北欧デザイン研究の第一人者であり、 生活デザインの提唱者として幅広くしられる島崎信(しまざき まこと)先生。 その島崎信先生に、“地に足をつけた暮らし”をつくりだす道具に ついてお話しいただくコラム「実にいい、暮らしの道具」。 毎回テーマを決めてお届けしています。

今回は、現在開催中の展示イベント 贅沢な時間の過ごし方 〜北欧の逸品 KASTHALL × FINN JUHL〜でもご紹介している 「フィン・ユールの家具」についてお話しいただきました。
イベントの詳細はこちら

―デザイナーとマイスター
FINN_01.jpg フィン・ユールは、デンマーク王立芸術アカデミーの建築科で学んでいました。 ハンス J. ウェグナーやボーエ・モーエンセンなど、北欧を代表するデザイナーの多くが コーア・クリントの影響を色濃く受ける中、建築を学び、建築の視点から家具をデザインした フィン・ユールは、デンマークの家具デザイン界でも異色の存在でした。
座り心地と、椅子に美しさを吹き込んだデザインの発想には、力学的構造への配慮の薄いものも多かったので、 当時「構造音痴」と揶揄されていたと言います。

そんなフィン・ユールがデザインした難解な構造の製品化を助けたのがニールズ・ヴォッタ―という マイスター(家具職人)です。ニールズ・ヴォッタ―は、強度を考慮した様々なアドバイスで、 技術的な部分をサポートしていました。
デンマークの家具は、デザイナーとマイスターがタッグを組むことで成り立っていると言われていますが、 この2人も例外なく、互いに尊敬しながら、それぞれの領域を極め、家具の製品化にこぎ着けたようです。

―海外での活躍
さて、デンマーク国内では家具デザインの主流とされた、いわゆるコーレ・クリント派の出身ではないことから、 とかく厳しい目で見られていたフィン・ユールですが、戦後アメリカで活躍し、また輸出された家具の人気の後押しを受け、 36歳の時にはニューヨークの国連ビル内にある国際信託統治委員会会議場の設計を任されることになります。 アメリカは多民族国家でヨーロッパ出身者が活躍する土壌があったこと、 また国連の初代事務総長トリグブ・ハルブダン・リーがノルウェー出身者であったことなどが、 フィン・ユールの指名に影響したと言われていますが、いずれにしても家具と空間の相互作用を理解する 貴重な建築家として評価されていたことには間違いありません。
ここでフィン・ユールは、照明、カーテン、壁板、カーペット、椅子まで、全て自身でデザインしました。 このプロジェクトによってフィン・ユールは人気を不動のものとしました。
フィン・ユールのデザインは多岐にわたります。SAS(スカンジナビア航空)の世界中の営業所のインテリアデザイン、 大型ジェット機DC8の内装デザイン。コペンハーゲンにある国営放送局ラジオハウスのホールの音響性が高い評価を得ているのも、 設計を手掛けたヴィルヘルム・ラウリッツェン事務所の右腕だったフィン・ユールの功績と言っていいでしょう。

―作風の変遷
02_Pelican.jpg さまざまな分野に活躍の場を広げたフィン・ユールですが、三期にわたって作風が変わっています。 まず一期。手掛けた空間には必ず立体彫刻を設置することからもわかるように、 フィン・ユールは彫刻への造詣が大変深かったようです。(もともとは美術史家になりたかったのだとか)
イギリスを代表する彫刻家ヘンリー・ムーアや、ヨーロッパで活躍した芸術家ジャン・アルプの作品から大きな影響を受け、 作風にもそれが表れています。
この時代、1940年代前半にデザインされたのが「世界で最も美しい肘をもつ」と言われている NO.45や 包みこむようなアームが特徴の ペリカンチェアなどです。 (※画像:ペリカンチェア)

03_Egyptian.jpg 第二期はというと、ポリネシアやアフリカ原住民の、仮面や槍、武器などの道具からの影響が見られます。 プリミティブな造形力に惹かれていたようです。
『NO.45』と並び、フィン・ユールの代表作に称される『チーフテンチェア』は「酋長の椅子」とも呼ばれ、これらの道具から発想を得ているのが分かります。 また、1949年のギルド展でフレデリック国王が自ら腰掛けた椅子としても有名です。
背もたれの三角形のフレームが特徴の『エジプシャンチェア』は、 名前の由来でもある古代エジプトの家具がデザインのルーツとなっています。(※画像:エジプシャンチェア)

04_France.jpg そして第三期。時代が量産を求めるようになると、生産性を高めるためにアームや座面などのラインが より直線的になっていきます。 1950年代につくられた、『ジャパンソファ』や、今は無きFrance & Son社でつくられた フランスチェアなどに その特徴が見受けられます。
宙に浮いたように見える座面や、直線的ながら随所に施された曲線状のフォルムがフィン・ユールらしいデザインです。 (※画像:フランスチェア)

いずれの時代も、フィン・ユールらしい、機能的かつ、芸術的な作品です。 さらに空間でいかに使われるかがよく考えられたデザインになっています。

05_Revival.jpg また、時代によって家具の人気にも変動が見られます。ここ最近、一部の層にではありますが、 フィン・ユールの人気が高まっているように感じます。昨今復刻された『グラスホッパーチェア』や、 『コレクターズテーブル』『NO.48』などもその人気を裏付けていると言えるでしょう。

今は個性の時代。暮らし方もおのおの別々で、価値観も多様化しています。 工場での量産、安定した品質、低価格を求める傾向はもちろんありますが、一方で、 手仕事ならではの温もりを感じられるような、繊細な美しさを求める人も増えてます。 フィン・ユールの家具もその最適な要素を持っています。 私は実際に、京都の町屋でフィン・ユールの家具をつかっていますが、意外に日本家屋にも馴染みがいいんです。 ぜひ自分なりの使い方を見つけて、フィン・ユールの家具に親しんでもらいたいものです。

※ページ中の画像はイメージです。
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島崎 信(Makoto Shimazaki)
makoto shimazaki.jpg
武蔵野美術大学名誉教授。1956年東京藝術大学美術学部卒業。1959年デンマーク王立芸術アカデミー建築科修了。 王立芸術アカデミーのオーレ・ヴァンシャー教授のもとで研究員として家具デザインを学び、 ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、ボーエ・モーエンセン、ポール・ケアホルムらデンマークのデザイナーたちと交流。 北欧デザイン研究の第一人者であり、生活デザインの提唱者として国内外でインテリア、プロダクトデザインに関わるほか、 家具・インテリアデザインの展覧会やセミナーの企画も多数手掛ける。

2019/11/18 更新

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