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2020年2/14(金)クローズ

住所
東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー内
リビングデザインセンターOZONE 5F

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島崎信コラム「実にいい、暮らしの道具 」vol.8 ニーチェアXの誕生物語

Column

NY_01.jpg 北欧デザイン研究の第一人者であり、 生活デザインの提唱者として幅広くしられる島崎信(しまざき まこと)先生。 その島崎信先生に、“地に足をつけた暮らし”をつくりだす道具に ついてお話しいただくコラム「実にいい、暮らしの道具」。 毎回テーマを決めてお届けしています。
今回のテーマは、「ニーチェアXの誕生物語」
暮らしのかたちでもロングセラーを続けている『ニーチェアX』。 2020年は、このニーチェアXを生み出した新居 猛(にい たけし)さんの生誕100周年、そして発売50周年を迎えます。
そこで今回のコラムでは、新居さんと親交の深かった島崎先生に、 ニーチェアXがいかにして生まれたのか、時代背景なども踏まえてお話しいただきました。
―新居 猛さんの生い立ち
NY_02.jpg 新居さんは1920年に徳島県で生まれました。おじいさんが古物商で働いていたそうですから、 モノの美しさを見極める目がもともと備わっていたのかもしれません。 さらにおじいさんが副業で営んでいた竹刀や小手など剣道の道具や胴着をつくる仕事をお父さんが継ぎ、 以降新居家は、剣道具・柔道着の販売と一部製造を営んでいました。 手縫い・ミシン掛けなどの縫製も身近で行われていたため、子供の頃の新居さんも、 布にチャコで印を付けるなど手伝いをしながら、縫製の行程を身につけていったようです。

NY_03.jpg ところが戦後、GHQの政策「武道禁止令」により、柔剣道が禁止となってしまい、 家業である柔剣道具の販売が出来ず、なんとか食べて行くために、 県の職業補導所の木工コースに入って家具づくりを学びはじめました。 その後1949年には、友人とともに木工所「便利堂」をつくって、ご近所の棚をつくったり、建具を修理したり、 小回りの利く便利屋さんのようなことをやっていたのだとか。
サンフランシスコ講和条約によって、武道が解禁された後は、再び剣道の道具を作り始め、 並行して、家内生産で家具を作っていました。

NY_04_AXchair.jpg 1950年代後半になると、日本でもデザインに目が向けられるようになり、 各国の家具や生活デザインの展示会が百貨店などで開催されるようになりました。
新居さんは展示会に出品されていたAXチェア(デザイン:ピーター・ビット&オーラ・M・ニールセン)を見て 「構造的に随分無理な張地の止め方をしているな」と思い、 「なぜ椅子がこんなに高いのか」という印象を受けたそうです。 その椅子をきっかけに、どうしたらもっとコストを下げた椅子が作れるか、 と新たな椅子の開発に関心が向けられていったようです。
試行錯誤の末、商品梱包材の値段や、輸送費、倉庫代などの関連コストを下げるために、 折り畳み式の椅子を考えだし、コンパクトパッケージを実現して、コストダウンをはかる道を見出しました。

―ニーチェアXの誕生物語
NY_05.jpg 丁度その頃、中小企業省が日本の家具の技術向上を目的に、家具の先進国・デンマークからオーソリティーとして コペンハーゲン市立工業技術大学で私の指導教授を務めていたイェンセン教授を招くこととなり、 私はその通訳として共に全国を回りました。
その途中、1960年の暮れに徳島を訪れた際、私は初めて新居さんに会ったようですが、実ははっきり覚えていません。 ただそこで新居さんが生みだしたアルミ製の脚をもつ、軽量な折り畳み椅子を目にして、 こういうデザインを出来る人がいるのだなあと強い印象を受けたことを覚えています。 その後、新居さんの椅子は木工展などで評価されるようになり、さまざまな賞を受賞することになりました。 メディアなどでも取り上げられ、豊口勝平*さんには、「これは機能・生産・デザインともに完璧な椅子だ」と絶賛されたそうですよ。
豊口勝平*…日本の家具・インテリアデザインのパイオニアの一人。仙台の産業工芸試験所の部長を勤め、 退任後、武蔵野美術大学のインテリアの教授として後進を指導した。

数年後、新居さんが東京の私のもとへ相談に来ました。 心血注いでつくった折りたたみ椅子に名前を付けたいということだったんです。 私は「“NY(ニー)チェア”はどうでしょうか 」とアドバイスしました。 デンマーク語でNY(ニュイ)は新しいという意味。また、語感も新居さんの苗字にも通じるものがあります。 新居さんはこの名前を大変気にいられたようです。

―カレーライスのような椅子
NY_06.jpg ニーチェアXが売れ出して、日本だけでなく世界にも輸出されるようになってからも、 その生産は徳島の自宅工場で続けられ、家族で頑張っていました。 シートのキャンバスは、座る部分がどうしても伸びてしまうので、その対策としてシートを水につけて、 足で踏んで伸ばすだけ伸ばしてから出荷したり、パイプを曲げるパイプベンダーという機械を自作したりと 日々工夫と改良を重ねていました。

新居さんは「座り心地を落とさず、とにかく安く道具のように役立ってこそ椅子」という信念のもと、 「多くの人から愛されるカレーライスのような椅子づくり」を実践されていました。 結果、50年たった今でも世界中で愛されるロングセラーの椅子になっていったのです。

―現在のニーチェアXと50周年限定モデル
NY_07.jpg 現在のニーチェアXの製造は徳島を離れ、メーカーに引き継がれました。 座面の帆布は岡山県・倉敷市で作られており、 今となっては古い織機でしか織り上げることができない、丈夫な特別仕様でオーダーしています。
そんな訳で、どうしても生産数は限られてしまいますが、座り心地や耐久性に影響する大事なシートなので、 そこはこだわりを持って作っています。
脚も当時はメッキだったのをステンレスにしていますし、メーカーに引き継がれた後もさらに、 品質にはこだわり続けています。

NY_08.jpg そのニーチェアXが、2020年に発売50周年を迎えるにあたり、記念モデルが発売されることになりました。
シートは使いこむごとに深まる風合いを楽しめるよう、「Kinari(生成り)」と「Kuro(黒)」の2色。 アームも経年変化が楽しめるようオイル仕上げになっていて、アームの裏にはレーザー加工でシリアルナンバーと 新居さんの名前が彫られています。

新居さんの「いつの時代も変わらず愛され続ける良い椅子をつくる」という想いは、私たちが紡いでいかないといけません。 もちろん発売当時の価格¥2,900とはいきませんが、変わらずリーズナブルな価格で、 より品質の良いものをこれからも作りつづけてほしいと願っています。

※ページ中の画像はイメージです。
過去のコラム一覧はこちら

[暮らしのかたちからのお知らせ]
NY_09.jpg 暮らしのかたち店頭では、9/5(木)よりニーチェアX 50周年記念モデルを展示中です。11月の発売に先駆け、ご予約も承っております。 なお、数量限定生産につき数に限りがございますので、あらかじめご了承ください。(※一部のモデルはご予約が終了しております)
ニーチェアX 50周年記念モデルの詳細はこちら

また、2019年11/21(木)からは、通常仕様のニーチェアXが価格改定となります。10月からのご注文は消費税の増税も伴いますので、 ご検討中の方はどうぞお急ぎくださいませ。
(※暮らしのかたちでは11/19(火)まで旧価格(別途消費税)でのご注文が可能です。)
ニーチェアX 価格改定の詳細はこちら
※「ニーチェアX Shikiri」「ニーチェアX 50th記念モデル」の価格改定はございません。

暮らしのかたちでは、2019年10月以降ご納品の場合でも、9/30(月)中のご注文分までは、8%の税率のままご注文を承っております。ぜひこの機会にご検討ください。
島崎 信(Makoto Shimazaki)
makoto shimazaki.jpg
武蔵野美術大学名誉教授。1956年東京藝術大学美術学部卒業。1959年デンマーク王立芸術アカデミー建築科修了。 王立芸術アカデミーのオーレ・ヴァンシャー教授のもとで研究員として家具デザインを学び、 ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、ボーエ・モーエンセン、ポール・ケアホルムらデンマークのデザイナーたちと交流。 北欧デザイン研究の第一人者であり、生活デザインの提唱者として国内外でインテリア、プロダクトデザインに関わるほか、 家具・インテリアデザインの展覧会やセミナーの企画も多数手掛ける。

2019/09/23 更新

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