国産木材の活用促進を目的に東京都がリビングデザインセンターOZONEの5Fにオープンしているショールーム【国産木材の魅力発信拠点 MOCTION】。スギ・ヒノキなど国内の人工林の伐採・木材活用と、森林循環が求められているなか、MOCTIONはどのような活動をしているのか、お聞きしました。

国産木材の需要低迷がもたらす諸問題にアプローチ

「MOCTIONでは製材、木材流通から、建材、家具、道具などの工業製品までの情報を一貫して取り扱い、様々な角度から国産木材の需要を喚起し、木質化を推進する… そのためのアクションを呼び起こし、支援していく活動を行っています。」と話すのはMOCTIONスタッフの濵田道昭さん。

これらのアクションは水源のかん養、土砂災害の防止、二酸化炭素の吸収・固定、生態系の保全など、森林に関するSDGsの諸課題に直接アプローチするだけでなく、林業の後継者問題やスギ花粉の削減、国際情勢による外材流通の不安定化や高騰(ウッドショック)への対応など、日本の山林と木材をめぐる様々な社会問題とも密接に関わってきます。

また、東京都の設置施設でありながら、国産木材全体の活用促進を目的としているのもMOCTIONの特徴です。47都道府県の木質化に関する様々な活動情報を把握し、例えば、「産地が確実にトレースできる近隣地域の認証材を使用したい」という建設業界の方から、「故郷の木材を使って家を建てたいがどうすればよいか?」という個人のお客様まで幅広い相談に対応し、各地の県庁、市区町村と連携しながら、企業や一般の方とのマッチングを行っています。

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国産木材の魅力発信拠点 MOCTION エントランス

国産木材を身近に ~ 「木質化」というMOCTIONのミッション

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47都道府県の木質化活動を紹介。データベースでの検索も可能。

MOCTIONが強く打ち出しているのが「木質化」です。身近な生活空間に積極的に国産木材を使っていく、あるいは他の素材を木材に代替していく活動が求められています。しかし、一般の住宅や家具の場合はわかりやすいのですが、それ以外の領域ではどのように木質化が図られているのでしょうか?

「MOCTIONが中心に進めているのは公共空間やオフィスなど都市施設の木質化です。木は二酸化炭素を吸収し、木材化されても固定化し続けるという、他の素材にはない特性を持っています。公共施設やオフィスを木質化することは、都市部に森林をつくるのに近い効果が期待できると言えるでしょう。もちろん、あたたかな木の風合いが働く場の快適性を高めることは言うまでもありません。こうした場こそ、国産木材の活用に大きな可能性を秘めていると考えています。」(濵田)

実際に東京都では、「にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業」「木の街並み創出事業」「中・大規模建築物の木造木質化設計支援事業」など、多摩産材や国産木材の積極的な利用を条件に、民間の施設整備事業に補助金を交付するなど具体的な制度整備も進んでいて、これらへの応募申請のご案内もMOCTIONが仲介しています。また令和6年からは国税として「森林環境税」の課税が決まっていて、その使途として「森林整備」や「担い手確保」と並んで「木材利用・普及啓発」が明確に位置付けられています。今後は国内のあらゆる自治体・企業が、こうした活動への対応力を問われることになるでしょう。さらに、森林や木材に関わる企業にとっては新たなビジネスチャンスとして見ることもできるはずです。

木質化の具体的活動例を紹介する企画展示

MOCTIONのスペースの半分は、日本全国の木材活用を約2週間サイクルで順次紹介する企画展示空間として活用されています。2022年3月31日(木)からはMOCTIONの地元でもある東京都の木材「多摩産材」についての企画展「木にかこまれたワークスタイル 東京の木 多摩産材展示~木と学び、木に学ぶ~」(前半・後半)を開催。タイトルのとおり、前述のオフィスの木質化についてはもちろん、コロナ禍における働き方として大きな注目を集めている自宅でのリモートワークに関わる家具の提案など、働く空間の木質化に関する様々な商品や資材が紹介されました。

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圧密加工した多摩産材スギによる「ブックスタンド付きデスク」(飛騨産業株式会社)

「多摩産材の大半を占めるのはスギ・ヒノキ材ですが、スギは木質が柔らかくて傷つきやすく、そのままではデスクやテーブルに使いにくいのが特徴でした。これを加熱圧縮によって克服する技術『圧密加工』で作られたデスクやテーブルも展示しています。」(濵田)

また、最近の住宅ではリビングと子ども部屋・勉強部屋とを明確に仕切らない間取りが人気だったり、「リビング学習」というスタイルが注目されていますが、そのようなニーズに最適な、ゆるやかな外枠に囲われたブース型の学習机なども紹介されました。公共施設やオフィスの木質化に関しては、化粧板やABS樹脂で作られた「会議テーブル」を、スチールパイプの基材はそのままに、天板や幕板を交換するだけで一気に木質化できるキットの紹介も。もちろんこれらに実際に座ったり触れたりしながら、風合いを体感することができます。

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多摩産材を使用した「表層圧密(杉)Gywoodシリーズ 会議テーブル天板」(ナイス株式会社)

会場では展示参加企業の日ごろの仕事の様子をレポートした映像が流され、多摩の山林から木が伐り出され、製材を経て製品へと生まれ変わっていく過程という、まさにMOCTIONが大切にしている、木質化に関する一連のつながりを追体験することも可能。2022年4月14日(木)から4月26日(火)までの後半の展示では、災害などの非常時には更衣室や授乳室などの間仕切りに変形させることができるテーブルや、さらに遊具や木育おもちゃ、お箸など、より私たちの生活に身近なアイテムも追加紹介されました。

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災害時には間仕切りとして転用できる「ウッドトランスフォームテーブル」(帝国器材株式会社)

※文中敬称略

ショールームよりメッセージ

東京の木、多摩産材を利用することは、多摩地域の森林の伐採と植林を促し森林の循環につながります。
ぜひMOCTIONで多摩産材をはじめ国産材に触れてみてください。


※2022年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

国産木材の魅力発信拠点 MOCTION

館内ショールーム

全国各地と連携し東京都が運営するこの場所では、国産木材の活用に向けた様々な情報を発信しています。常設エリアでは、東京の多摩地域で産出された「東京の木 多摩産材」を使用し、オフィス空間を提案。企画展示スペースでは全国の都道府県が展示を行います。また木材の活用に役立つセミナーも開催しています。