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Home > イベント・セミナー > イベント・セミナーレポート > MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011 

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イベント・セミナーレポート

川上元美さんの45年に及ぶデザイン活動をじっくりと辿る MOTOMI KAWAKAMI CHRONICLE 1966-2011  川上元美 デザインの軌跡

2011年9月9日(金)〜25日(日)

撮影/深沢次郎 ※

日本を代表するデザイナーとして、川上元美さんの名を挙げることに異を唱える人はいないだろう。その作品数は800点以上。時計やステーショナリーといった小物から、数々の家具、精密機械、さらには橋梁まで、川上さんが手がけたデザイン領域は実に幅広く、多彩な回答を世に提示しつつ、日本のデザイン界を牽引してきた。

川上さんがデザイナーとしての一歩を踏み出したのは、東京藝術大学大学院修了後の1966年。イタリアの建築家、アンジェロ・マンジャロッティさんの作品集との出会いをきっかけに彼の地に渡り、マンジャロッティ事務所に入所したときに始まる。そして45年後の今に至るまで、デザイン界の第一線で活躍している。

本展は、そんな川上さんの活動の道のりを改めて振り返るとともに、若い世代がそのデザイン哲学に触れ、デザインに向き合う姿勢を学び取る機会を設けようという趣旨で開催された。

イベント詳細はこちら

取材・文/長井美暁
撮影/大木大輔(※除く)

会場構成

各ボックスの入り口は、会場入り口から見ると側面や背面に設けてあるため、会場に入った時点では作品がまったく見えない。サインと案内図を頼りに作品を見つけ、静かに向き合う。それはまさに「川上さんの作品を巡る旅」だった。サインはトラフとの協同プロジェクトも多いグラフィックデザイン事務所TAKAIYAMAによるもので、この場でもぴったり息の合った仕事を見せていた。

川上さんとトラフの鈴野さん ※

会場はOZONE 3F パークタワーホール。ホワイエで来場者を出迎えた光のゲート「円意」は、川上さんがこの展覧会のために自らデザインしたもの。その周りには川上さんがこれまでにデザインした椅子が置いてあり、座って楽しむことができた。壁に掲げられた年表を見て、作品の数と幅広さに改めて驚いた人も多かっただろう。

会場構成の担当として白羽の矢が立ったのはトラフ建築設計事務所だ。意外な顔合わせに驚いた向きも多かっただろう。本展の企画者であるTRUNKの桐山登士樹さんは、川上さんをよく知る人に頼むことは初めから避けたかったという。本人を知らないほうがドラスティックにまとめることができるからだ。そのうえで、トラフを抜擢した理由を「川上さんの人間性を表す繊細にして大胆な表現は必須であり、現代的な時代の気分も盛り込みたい。そう考えたとき、繊細でありながら表情豊かで美的な表現を得意とするトラフが最も適任だと思ったのです」と語る。

その期待を受けたトラフは、川上さんのこれまでの作品に触れ、時代やクライアントの要請に誠実に応えながら常に挑戦する気持ちを失わないところに、デザインに対する真摯な姿勢を感じたという。川上さんが一つひとつにかけた時間、真剣な取り組みの過程を来場者に伝えるには、作品を一堂に並べて展示する俯瞰的な構成ではないほうがいいだろう。また、川上さんの控え目な人柄を表わすように、押し付けがましくなく作品を見せるにはどうすればいいか。
さまざまな方向から検討した末に考え出された会場は、テーマごとに大小さまざまなボックスを置き、その中に作品を展示して、来場者がじっくり作品と対峙できるようにするというものだった。川上さんの作品のディテールが引き立つようにボックスはラワン合板でつくったが、その内側は白く仕上げて、素っ気ない佇まいの外側との対比によって作品に集中できるようにした。また、通路などのボックス以外の空間も丁寧にデザインした。 「ボックスからボックスへと渡り歩きながら、川上さんの軌跡を追体験できる会場にしたいと考えました。でも、作品自体はボックスの中にポンと置いてあるだけ。このような会場構成は作品に力があるからこそ実現できたものです」とトラフの鈴野浩一さんは話す。

この展覧会で改めて川上さんの仕事の全貌を知った人も、初めて川上さんの世界に触れた人も、その幅広いデザイン領域の中に、1本の軸がすっと伸びているのを感じ取っただろう。「私は、デザインとは、根無し草のように時代とともに浮遊するものでは無く、個を超えてある普遍に至りながらも、なお個が貫かれているものと解釈している」という川上さんの言葉は、デザインに関わる多くの人が胸に刻んだはずだ。

「生きている間に自分の回顧展を見られて良かった(笑)。今さらながら気付いたことがたくさんあります」と川上さん。会期中はほぼ毎日、会場に足を運び、来場者に作品を説明したり、スケッチ集に見入る若者に目を細めたりしていた。「この時代に、一人のデザイナーの展覧会から意味あることを発信できるのかと心配しましたが、このような仕事の足跡を特に若い人たちに知ってもらえたのは嬉しい。結果だけではなくプロセスも見てもらったことで、何かしらの発見があったことを願っています」。川上さんに続く人たちへの、川上さんからの温かいメッセージに満ちた展覧会でもあった。

川上さんと長山智美さん ※

本展に華やぎを加えたのが、インテリアスタイリストの長山智美さんによるコーディネートルーム。「南国にある川上さんの秘密のコテージ」をイメージした空間で、川上さんの作品(ベッド、籐ソファ・籐テーブルなど)の新たな魅力を引き出していた。長山さんが川上さんの事務所を訪れて意外だったのが、川上さんの好みとは対極にあるような民芸品がいろいろと飾ってあったこと。そこからエスニックなイメージを膨らませたという。結果的には「川上さんとアーツ&クラフツの融合という感じにもなった」と長山さん。ちなみに壁紙はウィリアム・モリスだった。写真左に映る小窓からは、等身大の川上さんの人形が顔を覗かせていた。

川上さんも、長山さんによるコーディネートルームを「このまま持って帰りたい」ととても気に入っていた。民芸品の数々は旅の思い出としてノミの市や古道具屋で買い求めたものだという。ふだんは事務所や自宅に飾ってあるそれらが見られたのも、本展だけの貴重な機会だった。

川上さんデザインのテーブルの上には作品のスケッチ集などが置いてあり、やはり川上さんデザインの椅子に座ってそれらにじっくり目を通す来場者の姿が多く見られた。

会期中の3回に渡り、川上さんに縁のある人を迎えてのデザイン鼎談が行われた。1回目はデザインジャーナリストの佐藤和子さんとインテリアデザイナーの植木莞爾さん、2回目はデザインジャーナリストの川上典李子さんと本展会場構成を担当したトラフの鈴野さん、3回目はアートディレクターの佐藤卓さんとキュレーターで武蔵野美術大学教授の新見隆さんがゲストで、それぞれ川上さんとのエピソードを交えて楽しい話を披露してくれた。

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