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2006年7月13日(木)から18日(火)までの6日間、リビングデザインセンターOZONEの全館をあげて「夏の大茶会2006」が開催された。今年で5回目となる夏の大茶会は、「お茶を楽しむ暮らし」をテーマにOZONEの夏の定例イベントとしてすっかり定着した模様だ。
(文/山本玲子)

特別展示の「T-room project」
「お茶」とは茶葉や茶菓だけでなく、お茶を淹れるための道具や空間、すなわちリビング全般の要素がかかわってくる。まさにお茶とは単にのどをうるおすという意味だけではなく、“暮らしのデザインの原点”であるといっても過言ではない。アジアやヨーロッパを問わず世界中どこにでも身近に存在するお茶文化を通じて、より暮らしを楽しむためのヒントを提供するというのがイベントのねらいだ。広報担当の木村聡子さん(OZONE事業推進部)は次のように語る。

会場のステージではアジアの楽器を使ったコンサートなども行われた
「お茶と一言で言っても、ペットボトルで飲むお茶から形式を尊重する茶道まで様々なスタイルがあります。国の文化の違いや、誰とどのように飲むかといったTPOによっても飲み方が変わります。夏の大茶会では、そうしたお茶にまつわる様々な文化や考え方を紹介し、その人なりのお茶の楽しみ方を発見していただきたいと考えています。」

マーケットでは若手作家による茶器の展示即売も
夏の大茶会はOZONEの各階と新宿パークタワーの1F、B1Fを使って企画展示やイベントの開催、また茶葉や茶器などに喫茶に関連するショップ・マーケットなどによって構成されている。今年は全体的に「伝統と現代の融合」がテーマになったようだ。以下に詳しく紹介するが、伝統的な茶の湯に活躍中のクリエーターが新しい解釈を加えた作品「T-room project」や、来航100年を迎えた紅茶ブランドと若手デザイナーとのコラボレーションなど、お茶という文化を介することによって時代や国境を越えて人々がコミュニケーションしていくことの楽しさや奥深さを伝えるイベントとなった。
仮想の茶席空間で、茶の湯のエッセンスを味わう
特別企画展では、「お茶とデザイン」をテーマに大きく3つの展示を行った。

寄りつきの腰掛け「ISHI」は白い皮張りの造形が印象的
一つ目は現代を代表する4人のクリエイターによる「T-room project」。昨年末から今年の3月まで金沢21世紀美術館で開催された「Alternative Paradise〜もうひとつの楽園展」で展示され、大きな話題を呼んだインスタレーション作品である。同美術館以外では初のお目見えとなった。

「つくばい」の表現は巧妙でずっと見ていてもあきない
この空間では、隈研吾(建築)、原研哉(グラフィックデザイン)、深澤直人(プロダクトデザイン)、岩井俊雄(メディアアート)という分野の異なるクリエイターが茶室をテーマに協働した。仮想の茶席を想定し、時間軸に沿って鑑賞者を茶室へといざなう空間をつくりあげた。鑑賞者はここでは茶席に招かれた客として、一連の所作を擬似的に体験(鑑賞)する。「寄りつき」(デザイン:深澤直人)に置かれた腰掛けでほかの招待客と待ち合わせし、中門を抜けて「つくばい」(デザイン:原研哉)で手を清め、口をすすぐ。庭(デザイン:岩井俊雄)は照明と音響による演出で満たされている。そしていよいよ「茶室」(デザイン:隈研吾)に向かう。

「茶室」は照明や音響に合わせてゆったりと収縮している
茶室は人工皮膚にも使われるシリコンを素材とした、ぶよぶよとしたやわらかい泡か生き物のようである。かがんで中に入り躙り寄ると、茶道具(デザイン:深澤直人)が置いてある。ウォーターサーバーには抹茶のカプセルと茶筅(ちゃせん)という茶の湯の要素のみが用意してある。「茶を点てる作法を極限まで省くことで、どこまで茶の湯の美は存在するのか」(深澤直人)という問いかけでもあるという。
「Alternative Paradise〜もうひとつの楽園」
新旧を織り交ぜた現代らしいお茶の時間の在り方
そんな不思議な疑似体験をしたあとは、伝統的な茶道の美を体験する。これが二つ目の展示「小堀遠州×小堀宗実 遠州流・モダン&クラシック」だ。

遠州茶道宗家13世家元小堀宗実がセレクトした茶道具の展示
江戸の大名茶人:小堀遠州は、建築や庭園のデザインにも造詣が深く、空間や道具にも独自の美的感覚を発揮、「綺麗さび」という価値観を生みだした人物。伝統を重んじながら、時と場所と客人を思い、茶の在り方を探求する、総合演出家、プロデューサー的な存在だったという。ここでは、初代と13世家元ががそれぞれ好んで使った道具が紹介されていた。ショーケースに並んだ数々は手入れが行き届いた逸品ばかり。驚いたことに現在も実際に使われているものもあるという、まさに400年の時代を超えた競演。
展示の隣に呈茶席を設けた。茶道というと格式張った堅いイメージだが、ここでは気楽にプロの点前を楽しむことができる。

木村ふみによるテーブル・コーディネート
そして三つ目の展示は、食環境プロデューサーの木村ふみによるテーブル・コーディネートの作品。「五感で味わうデザイン」と題し、伝統や新しい感覚を織り交ぜながら、三つのテーマ煎茶・中国茶・紅茶でスタイリングを行った。茶器だけでなく、茶菓などをいただくための器や花器、リネン、さらにそれらの見た目や手に触れた感じまで含めた様々な要素を採り入れ、豊かで深みのあるティータイムを提案していた。
リプトンとnendoによるアリスのティーパーティー空間
紅茶が日本に来航して今年で100周年。それを記念して、紅茶ブランド「リプトン」と若手デザイナー「nendo」が遊び心のある不思議な喫茶空間を提案した。
「ALICE'S TEA PARTY」と題されたこの作品は、タイトルの通り「不思議の国のアリス」に登場するお茶会の場面を再現している。遠近法を使ってゆがんだ空間をつくり、両端の幅や高さが極端に異なるテーブルや、大小の椅子をならべた。来場者自身が主人公アリスの気分になって、身体が大きくなったり小さくなったりする様子を体験できるというわけだ。
実際ここはかなりインパクトのある空間だ。会場に入って、黒い壁紙を張った空間を一目見た来場者のほとんどが「あっ」と声をあげる。そして振る舞われたリプトンの紅茶を実際に楽しみながら、色々なサイズの椅子に腰掛けてみたり、記念撮影したりしていた。
![]() アリスの影をモチーフにした壁紙もキュート |
![]() 「ALICE'S TEA PARTY」の空間。踏み入れた途端に声をあげしまうインパクト |
一服のお茶で豊かな時間を過ごそう

三遊亭竜楽による落語茶会では日替わりの演目。会場は笑いに包まれた
ほかにも会場のステージ(3FOZONEプラザ)では、キャビンアテンダントが教えるお茶の楽しみ方や台湾茶の入れ方など、実践的な講習会も行われ、参加者は熱心に聞き入っていた。またユニークな試みとしては、三遊亭竜楽による茶の湯をテーマにした落語を楽しんだ後にお茶や茶菓をいただく「落語茶会」も人気だった。会期中には、茶葉の摘み取りから製造まですべて人間の手だけで造られた稀少な「手もみ茶」を体験できる機会も設けられた。

「茶歌舞伎」では五種類のお茶を試飲して銘柄を当てる
とにかくいずれのイベントも、お茶は身近なものであるとして、実際にお茶を見て触れて味わうのがコンセプトである。有数の茶所である静岡県川根町からは5種類の日本茶の銘柄を当てて遊ぶ「茶歌舞伎」もお目見えした。品評会で入賞した貴重なお茶や緑茶でつくった紅茶など、同じ緑茶でも土の作り方や製造方法が異なるだけで味わいがガラリと変わる。ちなみに筆者の回答は全部外れ。お茶とは実に複雑で奥深いものだ。茶歌舞伎には毎回多くの来場者が参加し、隣同士でおしゃべりしながら実に楽しそうにお茶の銘柄を当てていた。
こうしたイベントに参加し、お茶を味わいながらじっくり全館見て回ると一日があっという間にすぎてしまう。普段お茶といえばペットボトルかティーバッグでインスタントに済ませてしまっていたが、このイベントに参加して、一服のお茶でゆったりとした時間を過ごすことの楽しさを改めて教えてもらった。まずはお土産に購入した川根町産のこだわりの緑茶をじっくり淹れてみることからはじめてみようと思う。来年はどんな企画が催されるのか、すでに待ち遠しい。




